Cheers【2】 (ページ17)

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振り向く前に、確実に、北斗だ、と思った。というか、北斗であるという選択肢しかなかった。声は全然違うのに、彼が来る可能性はゼロだと決めつけていたから、脳内で認識が歪んだのかもしれない。

「…ジェシーくん、なんで」

会いたいと思っていたジェシーくんが、もはや不貞腐れるほど、投げやりになってしまうほど会えなかったジェシーくんが、数メートル先に立っていた。ここまで走ってきたのか、ハァハァと肩で息をしている。一歩ずつ私に近づくジェシーくんとその周りの世界が、スローに見えた。

「仕事早めに上がらせてもらった。はぁ、よかった」

ジェシーくんの額に汗が流れるのが見えた。それだけで、抱きつきたくなる。我慢していた感情を、全てぶつけたくなる。

「何で、ここにいるって分かったの？」
「北斗に聞いた。そしたら、『俺はこっちの友達と合流するから楽しんで』って」
「……」

北斗はいつから企んでいたのだろうか。さっき彼に対して酷くムカついてしまったことを、後悔する。

「浴衣、可愛い。似合ってる」
「……ありがとう」
「本当は1番に見たかったけどね」

ナチュラルに巻かれた顔周りの後れ毛を、片手でするっと耳に掛けられたら、ピンと張っていた我慢の糸が緩む。

「何で泣きそうになってるのー」
「だって」
「そうだよね。俺が直前にドタキャンとか酷いことしたから。本当、ごめんね」

ジェシーくんが悪いわけではないと、首を振る。ただ何でもない私が、勝手に寂しくなって、勝手にヤキモチをやいてしまっただけだ。

「私はジェシーくんの夢を1番に応援するから、私なんか疎かでいいよ。でも、ちょっとだけ傲慢になっちゃった自分が嫌で、…ごめん」
「……」

何か言おうとしたジェシーくんを遮るように、あと5分で花火が上がるというアナウンスが広場に響く。周辺の人の動きも、さっきより落ち着いていた。