Cheers【2】 (ページ16)

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「やばいもうすぐ花火始まるよ！」と小走りで通り過ぎていった誰かの声で我に帰った。北斗がトイレに行ってから随分経ってるはずなのに、全く戻ってくる気配がない。ここを動くのは危険な気がして、電話をかけようとスマホを取り出したら、ちょうど北斗からの着信。

「北斗、もうすぐ始まるよ」
「うん。Aどこいる？」
「え？どこってトイレの前だよ」
「あーごめん、俺広場まで来ちゃった」
「は？えっ広場のどこ？」
「あのー、白いキッチンカー出てるんだけど、その横あたり」
「分かった。今から行く」
「気をつけてね」

電話の向こうも私の周りも騒がしかったから、北斗の言葉を聞き取ることで精一杯だったけれど、電話を切ったあとに、なんで勝手に広場まで行くんだ、というモヤっとした感情が湧く。

いやいや、今はそれよりも、始まっちゃうから早く行かなくちゃいけない。足早になる集団に私も急かされて、広場まで急いだ。そして白いキッチンカーの前に着いたけれど、肝心の北斗はおらず、下駄で擦れた足の指がヒリヒリと痛んだだけだった。

「……どこにいるのよ」

あと少しで花火が打ち上がってしまうというのに。空いているベンチだって残り少ないっていうのに。スマホを操作する指に力がこもるのがわかる。北斗とのトークを開いて、音声電話のボタンを押そうとした。

「A！」