Cheers【2】 (ページ15)

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「ここで待ってて」そう言ってトイレに行った北斗を、私は横のベンチで待った。すると、私の隣に、大きな綿飴の袋を持った小学校高学年くらいの男の子が座った。足をぶらぶらさせて、ご機嫌そうだ。可愛くて見つめていたら、私の目線に気づいたのかパッとこちらを見た男の子と目が合った。

「お姉さん知ってる？」
「…ん？」
「あと10分くらいで花火あがるでしょ？」
「うん。そうだね」
「その花火をね、好きな人と見ると、その人と絶対結ばれるんだよ！」
「えー、なにそれ」
「これホントなんだよ！学校でみんな言ってる！」

あたかも小学生が作り出した都合の良い噂に、微笑ましい気持ちで相槌を打っていたら、彼は私が信じていないと察したのか、「ホントだよ！」「ホントなんだよ！」と前のめりで繰り返す。

「君は好きな子と見るの？」
「うん。告白する」
「えぇ！頑張ってね」
「お姉さんもね」
「…ありがとう」

男の子は、お母さんに呼ばれて駆け出して行って、すぐに人混みの中に消えた。「告白する」という小学生の男の子から出る言葉にしてはまだ違和感のある単語。でも、そこに、確かに彼自身の強い意志を感じて、子供だからって侮ってはいけないな、と反省した。

ジェシーくんと見たかったな。陰に隠していたはずの言葉が、ポツリと地面に落ちて、街灯の光に照らされる。ジェシーくんと一緒に花火見たら、結ばれる、のかななんて、あの出どころの分からない噂だって、力があるんじゃないかと思ってしまいそうになる。