Cheers【2】 (ページ13)

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「……ほんとにこっちに友達いないんだね」
「うるさいね」
「ふふ。でもいいよ。一緒に行ってあげる」
「随分上から」

顔を見合わせれば、2人の間の空気が緩んだ。ジェシーくんとは行けなくなってしまったけれど、花火大会の雰囲気を楽しめることが、それが家族のような間柄の北斗と一緒に、であることが、今は純粋に嬉しいと、そう思えた。私の心をポジティブに変換してくれたのは、紛れもなく太陽みたいなジェシーくんだ。

「浴衣着る？」
「そんなもの持ってません」
「買いに行こうか」
「いいよ」
「それはどっちの？」
「買わない方」
「俺との花火大会にも力入れてよ」
「力って？」
「もっとさ、緊張感というか特別感というかさ」
「持てって言われて持つものではないでしょ？」
「正論やめてよ」

いつも通りに戻った私を見て、北斗が安心したように笑った。思い切り笑った時に見える犬歯に、懐かしさを覚えた。確かに、いつか恋焦がれた横顔。

「帰ったら聞いてみよう。マリさんに。浴衣、もしかしたらあるかもしれないじゃん？」
「いいねそういうの」
「夏は嫌いだけど、満喫したいから」
「あくまで夏のためなんだ。北斗のためじゃなくてね？」
「勿論」

けれど、そこに胸を刺す恋の痛みは伴わない。こうして、途切れていた糸を再び繋げてくれたのだって、元はと言えばこの家に誘ってくれたジェシーくんのお陰だ。