Cheers【2】 (ページ11)

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お風呂に入って、熱った身体と落ち込んだ心を落ち着かせる為に縁側に腰掛けた。今日は熱帯夜だ。夜のニュースで気象予報士は、寝ている間の熱中症には十分気をつけてくださいと言っていた。本当は外の空気を遮断してクーラーの効いた部屋にいた方がいいとは分かっているけれど、どれだけ暑くても、蝉の合唱に耳を傾けていた方が気が紛れて心が楽だった。

「……びっ、くりした」

目を閉じて、サンダルを履いた足をパタパタと遊ばせていたら、気付かぬうちに北斗が隣に腰掛けていた。全く気配に気づかなかった。北斗は「あっちー」と嘆きながら電気屋さんの広告が入ったうちわを仰ぐ。きっと駅前で配っていたやつだ。

「なに、寝れないの？」
「…ちょっとね」

北斗と談笑する気分にはなれなくて、目を逸らしたら、ふっと笑われた。私の考えていることは分かっているよとでもいうように、「まぁねー」なんて呟く。

「てか、なんかさ、アイス食いたくない？」
「アイスなら冷凍庫にあるよ」
「違うじゃん」

北斗は、立ち上がって「ほら」と片手を私に差し出してくる。

「なに？」
「コンビニいこーぜ」

北斗を見上げながら、差し出される手にやむ無く私のを重ねれば、そのまま引っ張られて、無理やり立ち上がらされた。

「パッキンアイスなら家にあったのに」
「俺はクーリッシュが食べたいのよ」
「知らないし」

熱帯夜にわざわざ外に出たくない！と不貞腐れておきながら、それが北斗の気遣いであることも分かっていた。3分ほど歩いて辿り着いたコンビニのあまりの明るさに目を瞬かせたものの、3秒経てばもう目は慣れていた。

北斗が食べたいと言ったクーリッシュは、夏季限定のメロン味が出ていた。北斗は少し前に食べたことがあるらしく、よほど美味しかったのか「絶対にこれを食べて」とゴリ押しされたけれど、私は通常のバニラ味を選んだ。