Cheers【2】 (ページ2)

今日:87 hit、昨日:33 hit、合計:64,211 hit

. ページ2

.

テーブルには、私のよく知ってる人が腰掛けていた。よく知ってる人呼ばわりは少し冷めた言い方かもしれないけど。でもそのくらい、北斗とちゃんと顔を合わせるのは久しぶりだった。

「あら、今紹介しようと思ったんだけど、2人知り合いなの？」

マリさんの言葉に、コクリと頷く。視界の隅にいる北斗の頭も同じように動いて、恥ずかしくなった。仕草が似てるって、よく親に言われていたことを思い出す。

「ただいまー…あ、お客さん？」
「ジェシーくん、……おかえり」
「ジェシー丁度いいところに帰ってきたわね」
「あ、初めまして。松村北斗です」

ジェシーくんも帰宅して、少し緊張した空気が流れるリビングで、北斗だけ妙に冷静に挨拶をする。マリさんから、この家の状況を事前にある程度聞いていたのだと思う。

「取り敢えず2人とも座って？」とマリさんに促されて、私は北斗の隣に腰掛けた。ジェシーくんは、マリさんの隣。4人でテーブルを囲んで向かい合うと、会議みたいで背筋が伸びた。

「二人は、どういう関係なの？」と聞かれて、私はマリさんとジェシーくんに、北斗との関係を説明する。

北斗とは、簡単に言えば幼馴染だ。彼は私の２つ年上で、親同士が仲良く家も近所だったから、物心ついた頃から兄弟みたいな関係だった。私が高校卒業と共に東京に来た頃には、東京の大学に通っていた北斗にも時々会っていたけれど、北斗が大学を卒業してから全く会わなくなっていた。北斗は、数年前に脱サラして静岡に帰り、今は古着屋をやってるらしい。年始に帰省した時に、母親づてに聞いた。

「会うのは、3年ぶり？くらいだね。忙しいのか全然こっち帰ってこないし」
「それは、うん」
「あと、連絡先変わったでしょ」
「あ、変えた」
「教えなさいよ。ブロックされたのかと思った」
「ごめんなさい」

3年前は、まだ北斗にモヤモヤとした気持ちを抱いていた。だから敢えて連絡先を教えなかったのだ。全部終わったことだから、今更理由なんて本人に伝えないけれど。あの頃の私の淡い記憶は、もう心を痛めつけてくることなく、綺麗な思い出として、心の引き出しに仕舞ってある。