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車体の揺れが眠気を誘って、次に目を覚ましたらもう家の前だった。少し頭が痛い。そう考えていれば「お客さん？」なんて声を掛けられて、料金を催促されていることに気づく。バッグから財布を出す余裕もなくて、スマホに登録してあるクレカで支払った。
光る画面に、実家で飼っていた猫の壁紙と、23:50の表示、あと通知が少々。帰りが遅くなってしまったなーと少し反省しながら、タクシーを降りて、暗い道のりを転ばないようにゆっくり歩く。
靴脱いだら静かに階段を上がって、ベッドにダイブ…したら寝ちゃうからダメだ、なんて帰宅後の行動を考えながら、ドアの前で鍵を探していたら、タイミング良くドアが開いた。
「わぁ、ジェシーくん」
「あぁA！おかえり」
「…ただいま」
出てきたのはスウェット姿のジェシーくんだった。どこかに行こうとしていたのだろうか。
「コンビニ？」
「いや、……A待ってた」
「あ、ジェシーくん連絡くれてたんだ。気づかなくてごめんね」
「うん。心配したよ？」
スマホを確認したら、ジェシーくんから「何時に帰ってくる？」と言うラインが来ていた。ちゃんと確認していなかったから、気づかなかった。
「ごめんね」
「いーよ」
ジェシーくんに手を引かれて、玄関でパンプスを脱ぐ。一度身体を重ねてから、ジェシーくんはスキンシップが激しくなった気がする。元々パーソナルスペースは狭かったけど、より一層。
「けっこー飲んだ？あ、荷物持つ」
「いつもより飲んじゃった。ありがとう」
「今日あっつかったねー、風呂入る？」
ジェシーくんにエスコートされながら、さっきジェシーくんが玄関のドアを開けた瞬間の焦った顔を思い出して、思わず目の前の大きな背中に抱きついた。
「ジェシーくん、わざわざ起きててくれたの」
「うん。心配だったから。寝れなかったし」
「……泣きそう」
「なぁんでよ」
ジェシーくんがこちらを向いて顎を掬っては、触れるだけのキスをする。私を泣き止ませるおまじないみたいだ。
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作者名：Ne子 | 作成日時：2023年7月27日 19時
