Cheers (ページ26)

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「どうしたの」
「……」
「森本？」
「……違います」
「ここで隠す必要ないでしょ」

理由はなんとなく分かっていた。個室を出る前に彼は電話相手をじゅり、と呼んでいた。多分それが、彼女の心につっかえている。

「…絶対女の子でした」
「そんなことないと思うよ」

森本の前だと芯が強くて、不確かなことでは悩まないのに、彼が居なくなった途端に不安定になる。そういうところ、本人にもっと見せればいいのに、と思う。

「分かってます」
「ん？」
「慎太郎が女の子に人気とか、友達多いとか、分かってますけど！でも、ちょっと嫌なんです…」
「……」
「笑いますか」

確かに森本は誰にでも分け隔てなくフレンドリーだし、どこに行ってもムードメーカだけど、あなたに向く目線は明らかに特別だと思うよ。気づかない方が不自然なくらい。そう言おうとして、何度も泳がせている。なんか可愛いから。

「そういうとこさ、どんどん出していきなよ」
「え？嫌ですよ」
「…私のことだけ見てって、もう言っちゃえばいいんじゃない？」
「絶対嫌です。Aさん、投げやりになってません？」
「もどかしいんだよ君たち」

前々から、森本からも碧井のことを相談されてるから、私だけ2人が両思いなことを知っている。ただ、私がスイッチを押さなくても、気持ちに気づける機会は何度もあったから、意図的に2人を近づけることはしなかった。そうして様子を見て来たけれど、何ヶ月経っても現状維持、逆に拗れていくばかりで、もう、そろそろ具体的な行動に出ようかというところだ。