Cheers (ページ17)

今日:15 hit、昨日:94 hit、合計:100,656 hit

. ページ17

.

会社に着いて、投影する資料と原稿の最終チェックをして、会議室の準備も兼ねてリハーサルをしようとしていた。これから開かれる社内コンペでは、私が初めてリーダーを務めるチームで広告案をプレゼンする。入社して初めてプロジェクトリーダーを任せてもらった案件だからこそ、このコンペには思い入れが強くて、時間が迫るごとに緊張が増していた。

「Aさんその服新しいですよね？どこのですか？」

そんな私のことなどお構いなしに後輩の碧井は、仕事に全く関係のない雑談を持ちかけてくる。まぁ彼女の精神的なタフさに助けられてきた部分もあるから、なんとも言えないけれど。

「これはー、駅ビルに入ってるお店」
「珍しいですね花柄。趣味変わりました？初めて見たかも」
「…あ、あぁー変わったのかなぁ、良いよね花柄ー」
「新しい男の影響ですか？」
「えっ、は？なにが、」

いきなりの鋭角なアプローチに、手に持っていたタブレットを落としてしまった。室内に響く鈍い音。「図星ですか？」なんて言って、碧井は資料を投影するためのプロジェクターをいじっている。

「紙の資料持ってきましたー」
「あ、森本ありがとう」
「慎太郎早かったね」
「いやーガンダよ」
「走らない」
「すいません(笑)」

良いタイミングで、こちらも後輩で碧井と同期の森本が資料の束を抱えて戻って来た。会議の準備に意識を集中させて、先程の私の動揺は無かったことに、

「てか、ねぇ慎太郎。Aさん新しい彼氏できたっぽい」

無理だったみたいだ。それにしても、碧井。「彼氏ができた」は話を盛りすぎてる。牽制の気持ちを込めて、鋭い視線を向けてみるけれど、全く効かなかった。

「えぇ！マジっすか？この間何もないって言ってませんでした？」

恋バナ大好きな森本までノってきてしまえば、もう軌道修正は不可能に近い。2人してニヤニヤした顔で私を見つめてくる。新卒一年目の時は、もっと健気で可愛かったのに、いつからこうなってしまったんだ。