Cheers (ページ2)

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「こういう店、1人でよく来るんですか？」
「あ、…はい。すいません」

つい、謝ってしまった。日本食屋さんのカウンター席で、隣の男性に突然声を掛けられた。暖かな光と懐かしさのある店内の雰囲気にすっかり落ち着いていた身体が、急に緊張する。

華の金曜日に1人で日本酒と贅沢な日本食のコース料理を嗜む都内OL、本日27歳になった、私。そう今日は、私の誕生日だ。人並みの”誕生日”らしく、家族、親友、久しく連絡をとっていなかった高校時代の友達、などからおめでとうというラインが来ていたし、会社でも何人かが密かに祝ってくれた。「ご飯行く？」なんて誘ってくれた人もいた。だけど、私は1人で贅沢をしたかった。強がってるわけでもないし、こういう楽しみ方もアリだと思ってる。ただ、理解されないと思うから人に言ったことはない。

「なんで謝るんですか(笑)」
「いや、あー、変ですよね」

どうせ変だって思われるのが分かってるから、先手を打っておく。私のとびきりの防衛策だ。

「変じゃないです。全く」

予想に反して、彼は私を笑わなかった。私が謝ったことに関しては、面白そうに笑っていたのに。

「俺も好きなんで。1人でふらっとご飯屋さんに入って、ただ食事を楽しむの」
「えっ」
「ん？」
「私もです。でも、誰にも共感してもらえたことないから、周りに隠してるんですけど」
「確かに、この歳じゃあんまり共感されないかもね(笑)」
「はい。でも私は、こういうお店の空間ごと、好きなんです」
「分かります。高級感あるけど、なんか落ち着く」
「そうそう」
「あっ、今、共感できましたね、俺たち」

初めてだった。誰かと共有するためのキラキラした趣味を持った周りの同期や後輩たちを見ていると、私の静かで孤独な趣味がなんだか恥ずかしくなって、いつしか誰にも打ち明けなくなった。こうやって誰かと共有できたのが初めてで、気持ちが昂る。