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夏帆と一緒にランチをしたあともなかなかに忙しくて、疲れた身体に栄養を求めていつものラーメン屋に来た。店主に促されてカウンターに座れば、奥からアルバイトの樹くんが出てきて、私を見つけるなり笑顔で寄ってくる。揺れるピアスと、白いTシャツの余り具合は、全く変わっていない。ただ、彼の銀色だった髪は綺麗に黒に染まっていた。
「久しぶりー、Aちゃん」
「樹くん。辞めちゃったのかと思ったよ」
「いやー、今就活でさぁ、割と忙しいのよ俺」
「だから髪黒くしたのね」
「そう。どー？黒も似合っちゃってる？」
「似合ってる似合ってる。カッコいー」
「棒読みすぎ。まあいいけど」
樹くんは、チャラいけど愛嬌があるし、世の中を渡り歩くのは上手いだろうな。程よく力を抜きながら社会を生き抜けそう。そしてなんだかんだ、出世しそう。樹くんのここでの立ち回りを見ていると、そんな風に思う。
「何にすんの？醤油？」
「今日は塩にしようかな」
「珍し」
「そういう気分なの」
「ふーん」
私は大体、定番の醤油ラーメンを頼むことが多かったけれど、最近は避けている。理由は、まぁ、あまり思い出したくもないことだ。樹くんは腑に落ちない様子で他の席の注文を取りに行った。
お腹空いたな。ぼーっとしながらラーメンを待っていれば、控えめにガラガラと開いた横開きのドア。
あっ……
1番会いたくなかった人が、私を見つけるなりぎこちなく口角を上げて、軽い挨拶をする。その瞬間、私の空腹がどこかへ飛んでいってしまった。
「おつかれ」
「……おつかれ」
「隣いい？」
「え、他に席空いてるよ」
「一緒に食べたいから」
「一緒に……？」
いやいや、私たち、別れているんだよ。それも、あなたから振って。それなのに、一緒にご飯食べたいって、本気で言ってるのだろうか。
「お兄さん決まってます？」
「あ、俺醤油で」
考え込んでいる間に、ジェシーはスーツのジャケットを脱いで、カフスを外す。私は彼のこの仕草がすごく好きだった。仕事からオフモードに切り替わる瞬間。恥ずかしくて、直接伝えたことはなかったけど。
「ん？」
「いや……なんでも」
「……久しぶりだね」
「うん」
久しぶり、なんて同じように返したら隣に座ることを許したことになってしまうと思って、無理やり会話を終わらせた。店内はある程度騒音があるし、無言になったとて無音になるわけではないけれど、やけに静かに感じる。気まず過ぎて、もう出て行きたい。
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akikuma(プロフ) - 切ないですね…大好き"だった"、好き"だった"人、過去形なのがなんとも切なすぎます😭みんな幸せになれー！って心の中で叫んじゃいました！ (9月27日 7時) (
レス) @page45 id: 5677edd0e4 (このIDを非表示/違反報告)
Ne子(プロフ) - akikumaさん» はじめまして！わーいありがとうございます😭 (9月26日 23時) (レス) id: c4997b2b87 (このIDを非表示/違反報告)
akikuma(プロフ) - はじめまして！大好きなお話です！！また更新されて嬉しいです🥰続き楽しみにしてます！ (9月26日 17時) (レス) @page42 id: 5677edd0e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Ne子 | 作成日時：2023年3月30日 0時
