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「さっきの電話は、父さんから」
「お父さん？」
「うん。多分、早く元の道に戻れっていう電話」
「元の道って…」
「ちょっと長くなるかもしれないけど、聞いてくれる？」
「うん。聞きたい」
北斗くんがアイスコーヒーを一口飲むから、続けて私もゴクリと飲む。一瞬で、良い具合に身体を冷やしてくれた。
「俺の家柄が、ひい爺ちゃんから、代々法曹界の家系で」
「……うん」
「厄介なことに、結構名も知れてて。だから俺は小さい頃から、『将来は弁護士になるんでしょ』って、周りの色んな大人に、友達に、当たり前のように言われながら生きてきた」
「それに俺はなんの疑問もなく、与えられた環境で言われたことをやって、世間的に見れば良い私立に通わせてもらって、大学まで進学した」
「……まるで、父の人生をそのまま辿るみたいに」
耳から入る言葉が、どれもこれも初めましてのものばかりだ。本当に、私は北斗くんのことを何も知らなかったのだと実感した。目まぐるしいほどの北斗くんの情報が、一気に脳内に入ってくるから、混乱して何も言えない。
「周りの同級生にも、大人にも、『お父さんみたいになれるといいね』『お父さんが凄いから』『恵まれた環境で羨ましい』なんて幾度となく言われてきた」
有難い環境で生活してるって、分かってはいるんだけど。と加えて、溜息をつく。その瞳はやっぱり、暗くて黒い。
「このまま歩いていけばきっと、俺は弁護士になって父のように働くって、ふと思った時に、これは一体誰の人生なんだ？って、なんか迷子になっちゃったんだ」
「迷子…」
「そう。このまま敷かれたレールの上を歩いてるだけで、それって本当の俺なんだろうかって。他人から求められたままに流されていくばっかりで、自分が本当はどうなりたいかって、何になりたいかって。今、何をしたいかすら分からなくなった」
「だから、勝手に大学を休学して、逃げた」
北斗くんが、机上に置いた自分の手のひらを両手で強く握りしめている。自分を責めるみたいに。爪が食い込んでしまうほど、強く。思わず私は、北斗くんの手を包んだ。彼の抱えているものも、過去も、私には分からない世界のことだけれど、今とても抱きしめたいと思った。
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akikuma(プロフ) - 切ないですね…大好き"だった"、好き"だった"人、過去形なのがなんとも切なすぎます😭みんな幸せになれー！って心の中で叫んじゃいました！ (9月27日 7時) (
レス) @page45 id: 5677edd0e4 (このIDを非表示/違反報告)
Ne子(プロフ) - akikumaさん» はじめまして！わーいありがとうございます😭 (9月26日 23時) (レス) id: c4997b2b87 (このIDを非表示/違反報告)
akikuma(プロフ) - はじめまして！大好きなお話です！！また更新されて嬉しいです🥰続き楽しみにしてます！ (9月26日 17時) (レス) @page42 id: 5677edd0e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Ne子 | 作成日時：2023年3月30日 0時
