陸拾伍 ページ17
剣心「今日は何処なんだ?」
『あの大きい橋を渡った処の“松屋”はんいうお店よ。』
剣心「へえ…なかなか立派な店だな。」
『ねー。緊張してまうわ…』
辺りが薄暗くなってきた頃
剣心はAを座敷の会場に送るため他愛のない話をしながら歩いていた。
この世のものではない美しさと誰もが確信するAと、剣心のしなやかな美貌は周囲の目線を釘付けにする。
しかし彼らはそれに気付かない。
何故なら剣心も含め、度を超えた天然素性だから…
『剣心、今日は何してきたの?誰も居らんかったからびっくりしちゃった。』
ふと思い出したようにAが口を開いた。
剣心「…あの赤べこの大男と闘ってきた。」
『!…怪我は…?』
剣心はAの不安げな声色にふっと笑った。
剣心「していないよ。」
『良かったぁ…あ、ここや剣心。』
剣心「お、そうか。それじゃあまた後で来るよ。」
『ふふ…ほんまにありがとう。』
その言葉ににこりとだけ返した剣心は踵を返して元来た道を帰っていった。
『…さて。』
Aはその様子をしばし見送ると、店の扉を叩く。
『こんばんわぁ。胡蝶どす。』
「お待ちしておりました。中にどうぞ。」
直様店の主人が出てきてAを招き入れた。
***
『失礼致します。』
「来たか…入ってくれ。」
その言葉で襖を開け、客人の顔を見る。
『お久しぶりどす。髭を生やしたんやね、大久保はん。』
「ああ。胡蝶は変わらないか?」
『ええ。人間ですから年は取りましたけど。』
内務卿大久保利通その人だった。
真ん中に堂々と構え、その脇に御大臣や警護が陣取っている。
「はっはっは…そうだな。で、早速で悪いが何か弾いてくれ。」
『へえ。』
久しぶりのこの雰囲気。
皆が一斉に自分に注目する。
最初の音を弾くまでの心地よい緊張感。
Aが呼吸を整えれば、大きな座敷に美しい音色が響いた。
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モブキャラ - 私『刀姫』読みました!!とっても面白くて、最高でした!「刀姫』もこのお話も更新楽しみにして待っています!色々あってお気に入り登録できませんが、私の中ではお気に入り登録認定されてますので!頑張って下さい (2020年9月10日 5時) (レス) id: 8ce7db365e (このIDを非表示/違反報告)
あんじゅ - 最高 (2020年2月20日 21時) (レス) id: 0aa15127f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚姫 | 作成日時:2016年8月27日 22時