飛べなくなった愛され少女（HQ）

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Aside




『日向！ナイス！』


「あざっす！」



日々成長していく彼らを見れて嬉しい。



でも今日はなんとなく影山の調子がおかしい気がする。


『影山ーちょっと良い？』


「どうしたんすか？」


『右手軽くだけど腱鞘炎起こしてない？』


「えっ、全然痛くないっすよ！」


『貸してみ』

影山の手を取り親指をぐっと広げると「痛っ」と影山が顔をしかめた。


やっぱり。


『湿布貼るから、ちょっと来て。ごめんね？日向。ちょっと影山借りる。』


「いえいえ！」とぶんぶん首を横に振る日向を横目に救急箱から湿布と包帯を取り出し、応急処置をした。


「俺でも分からなかったのに、よく気づきましたね？あんな遠くから。」


『あー、なんか今日の影山のトスおかしくてね。少々ネット寄りだったり、
いつもより離れ気味だったり…とあまり安定してなかったの。

日向は気にせず打ってたっぽいけど。

指見たら多分無意識的だろうけど親指を使うことをちょっと避けてるっぽかったから。

腱鞘炎かなぁ…って。』

影山は多分少々の痛みには慣れてしまって自分でも気づかなかっただけだと思うけどな。


「っすげぇっすね。」

でも、そんな状況でもほぼ正確にトスを上げる影山がすごいと思う。


『さっきの感覚で慣れたらまずいから、１回ペットボトル使って練習してみない？』

「はい！」



日向がどこに来ても正確に打てるように、あとはさっきの感覚を慣れさせないため。

こういうのは早く対処しておいた方がいい。

1度癖がついたら困難だから。



練習再開すると、やっぱり親指を避けようとしたのか、右肘が若干下がっている。

そういう少しの差で大きく方向が変わるのだ。

『ちょっと肘が下がってるね。

こう…！だよ！』

影山の隣に立ってオーバーハンドパスを上げた。

久しぶりだから、不安だったけど、見事にペットボトルを倒した。

現役の頃に、磨き上げたスキルを活かしてアドバイスできる。
真面目に練習してて良かったな。



「1発で…すげぇ！春川さんってセッターだったんですか！？」


『違うよ。私は主に打つ方。』



影山にしばらく付き合っていたら、日向が来て、ボールを打ちたいっと駄々をこねるから影山がトスを上げた。


いつもの綺麗なトスだった。




影山はのみこみが異常に速くて尊敬する。



私は遅いから、憧れつつあった。

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