何も持っていない私に【蓬菊】 (ページ10)

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9話ページ10

Aside

“大丈夫だよ、良い人達だから”

健くんのその言葉を信じてスタジオに入った。

自己紹介の時は皆さんの方を見ることが出来なくて声も震えて、本当に緊張したけど…みなさんとっても優しくて、暖かい笑顔を私に向けてくれていた。

今はスタジオの隅に座って練習を見学しているところ！

健くん、私が風邪を引いたらいけないからってブランケットをリュックに入れて持ってきてくれていたみたい。

なんかもう本当に…申し訳ないな

申し訳ないって言ったら健くんに注意された←優しさで

芝「よし、じゃあ1サビからやりまーす」

♪～阿修羅ちゃん

曲がかかって、メンバーがそれぞれダンスを始める。

『え……す、すごい。』

みんながセンターになれる構成も、曲に合わせてコロコロと変わっていく表情も……全てがかっこいい。

え、踊ってみたって初めて見たんだけどすごくない？

食い入るようにみんなの練習をじっと見続けて、気づけばあっという間に1時間半が経っていた。

ハ「１回休憩しよー？？」
芝「そーだね！休憩休憩っ！」

ハネルさんの声をきっかけに、みなさん練習をやめて私の方(荷物が置いてある)に戻ってきた。

『ぁ、お疲れ様ですｯ…』

ハ「おつかれ〜！」

ふとスタジオの時計を見たら12時過ぎ…

あ、大変！お昼の薬飲まなきゃ…

たまたま健くんも時計を見てその事に気がついたみたいで、廊下の先の自販機で水が買えると教えてくれた。

『えっと、行ってきます…』

芝「気をつけてねー！！」

廊下を出て少し進んだところに、自販機があった。

ちゃんとただのお水もある…良かったぁ。

まさ「あ、Aちゃん！」

『あ、まさとさん…』

お水を取り出していたら、トイレから出てきたと思われるまさとさんに声をかけられた。

まさ「水でいいの？ジュースとか買ってあげるよ？｣

『あ、いや…薬飲まなくちゃいけなくて…』

まさ「そーなんだ！いろいろ無理しないようにね｣

『ありがとうございます…』

まさとさんと一緒にスタジオに戻って、私は自分の鞄から大量の薬が入った袋を取り出した。

みなさん多分気づいているのに、気を使ってかあまりこっちを見ないようにしてくれている…優しい。

薬を飲みながら、さっきの練習の時に見たかっこいいパフォーマンスを思い出す。

アナタシアのみなさんはすごく優しいけど、本当は私のことどう思っているんだろう…。