大切な毎日 8

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謙杜もまさか駄々こねてる間に打ち終わったとは思ってへんかったらしくて、口開けて呆然としとる。


『お風呂の時はなるべく擦ったりせんといてね』


和也「え、あ、はい…あの、ありがとうございます！」


あんなに嫌やった注射が気付かへんうちに終わってて、
謙杜もどんな顔したら良いのか分からへんらしい。
終わって良かったけど、嬉しいけど、でも打たれたって事実が段々嫌になってきて不快…！って感じのグチャグチャな顔。

…注射は終わったけど、まだ謙杜がやることは残ってる。


和也「謙杜、ありがとうございました言い。あと、もう1個言うことあるやんな。ぬいぐるみ投げたことちゃんと謝り」


謙杜「………いやっ！」


和也「……謙杜？お兄ちゃん、優しく言うのほんまに最後…」


謙杜「やって、やって！ちっくんした、おいしゃさんが悪いやん！！けんとわるないっ！」


もう、呆れてものも言えへん。
年長さんになってから自我も強なって、最近悪いことした時に素直にごめんなさいが言えなくなってることが多いんよ。
何しても、“けんとわるない！そっちがわるい！”って。
やからそのことでしょっちゅうお父さんにお尻ひっぱたかれてわんわん泣かされてるんやけど、全然懲りてへんやん。
…いや、今日は傍におるのが俺やから、どうせ怒られへんってやっぱり舐めてるんやろうな。

お医者さんは、全然大丈夫やでって優しく笑ってくれてる。


和也「…もうええわ。ごめんなさいも言えへんような悪い子、お兄ちゃんは知らんで」


謙杜「え、っ…」


和也「あの、ほんまにすみません。ごめんなさい。」


俺が謙杜の代わりに深く頭下げたら、


『ほんまにそんな気にせんといて。全然平気やから！』


ずっとお医者さんは優しいし、謙杜にも最後バイバイって手ぇ振ってくれたのに謙杜は不貞腐れて俺の後ろに隠れてるし。
けど、俺は謙杜の手も繋がんとそのままスタスタ歩いた。


謙杜「か、かずくん…かずくん…！」


後ろから謙杜がちょこちょこ追いかけてきてんの分かったけど、わざと無視する。
そのまま会計済ませて、駐車場に向かった。

あ、駐車場は危ないから、勿論謙杜の様子はちゃんと確認しながらの無視やで。笑


俺が無言で運転席乗り込んだら、涙目の謙杜が必死に後ろ乗ってジュニアシートカチャカチャしてる。
けど上手く出来ひんらしくて、1人でめっちゃ焦ってた。

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