ねぇ…松本センセ…？【4】 (ページ37)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:33,204 hit

Sweet kiss【M】ページ37

・

・

何もかもが宙ぶらりん。

そんな気がしてならない毎日が続いていた。

校門の向こう

並木の桜からは

煩いほどの蝉の声がする。

潤
『さすがにあちぃな…』

淹れたての紅茶は

口元に運ぶだけで

額に汗が滲むほど

季節はすっかり

夏になっていた。

潤
『ふぅ…』

ただでさえ来客の少ない午前中は

ひとりきりを感じる。

専門教室しかない静かな東館の１階だけど

今日は

隣接する教室のどれもが使われてないらしく

机に向かい黙って本なんかを読み耽っていると

この校内には

人なんて存在しないかのような錯覚に陥るくらいの静けさだった。

だから

潤
『いらっしゃい』

ほんの微かな空気の流れだけで気付く。

『ぁ、バレちゃった』

Aの気配。

･

潤
『つーか授業は』

『だーれだ？♪』

潤
『だれかなー？…ってバカ(笑)』

Aは昼休みや放課後

時にはこうして

授業をサボって

コソコソと準備室に入って来て

入口を背にしている俺の目を隠して驚かせることがあった。

潤
『こんなコトすんのキミしかいねーよ』

『驚いてくれなきゃつまんない…』

潤
『うわっ！！ビックリしたぁ…
めっちゃビックリしたぁ…

…これでイイ？』

『もう遅い』

潤
『で？授業は』

Aは勝手に

棚の上で、自分用の紅茶を淹れているが

その姿はもう

見慣れていた。

『あー…松本センセが先生みたい…』

潤
『俺、松本センセですから』

『だって…まだ足痛いし…』

潤
『嘘つきは授業戻しますよー』

『…体育キライなんだもん…』

潤
『あーあ…相葉先生に言ってやろう』

『相葉先生がキライなわけじゃないしぃ』

イーっと

子供みたいに歯を見せたAが

出来上がった紅茶を持って俺の傍に近寄り

机にお尻を乗せるようにもたれた。

潤
『もうホットはキツイよ？』

『あつ……』

潤
『な？(笑)』

カップを机に置いたAを引き寄せる。

するとAは

ストンと滑るように

俺の膝の上に落ちる。

潤
『キスして？』

微笑みを残したままの俺たちの唇が

軽やかな音を奏でた。

･

･