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ガムを膨らませる ページ15

中也は校門から少し離れた所で俯いていた。
 Aは家に帰る前に見つかってしまった絶望感やらこれから起こるであろう大惨事を想定して若干表情が死んでいるが、久しぶりに見た中也は一瞬だけ安心したかのように表情を緩めた。そして其の儘、いつかの様にAの頭を乱暴に撫で回したのだ。
 
 そうまでして心配されていたのを体現されていると、Aは先程まで「中原君に鉢合わせしないうちに、さっさと家に帰ろう」と思っていた事が恥ずかしく思えてしまったのだ。
「なんか……済みません」
「何がだ?」
「いえ、何も」
「そうか。まあ、取り敢えず場所を移すぞ」
 アダムはそんな二人をニコニコとしながら傍で見守っていた。

 そうして彼らは合流を果たすと、詳しい話と今後の流れを共有する為に近くにある公園へと移動することにしたのだ。



 公園では、先程太宰から一通り聞いたヴェルレエヌの情報と、Aが狙われていると云う話がまず初めに行われた。所々微妙な顔をしていたのをアダムに指摘されながら、それを嘘でのらりくらりと躱していく。

 ヴェルレエヌさんにもう既に殺された後だなんて口が裂けても云えない。絶対に云えない。
 Aの額に冷や汗が浮き出しているのをアダムはまたまた指摘しようとしたのだが、どうせ先ほどの様に躱されるのだろう、と指摘することを辞めたのだった。



 一通り説明が終わったのか、中也はAと同じく狙われている人物である白瀬に会いにいくと云った。
「白瀬?」
「覚えてねえか? 去年、電子遊戯場でお前に刃物を突きつけて来た奴だよ」
「あ! あぁ! 中原君の所為で私と太宰君が恋人同士だと思い込んでる人!」
「……それについてはもう謝っただろ」
「おや、Aさんは恋人がいらっしゃるのですね。どんな方なんですか?」
「いませんよ……」
 
 三人は公園を出て、白瀬のいる工場へと歩き始めた。
 「Aさん、Aさん」
 何処か気分が好調しているらしいアダムが、Aに手を差し出した。
「お近づきの印にと思って、ガムを一枚買ったんです。もし宜しければどうぞ」
「有難う御座います」
 Aはガムを口に放り込むと、数回噛んでから膨らませた。アダムは其れを見て、何故か満足気に頷き、中也は渋い顔で其のやりとりを横目で見ていた。

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黒猫 - pixivの方でコメントできないのでこちらでさせていただきます。相変わらず面白かったです!他の小説も読ませていただきました。ポケモンの「顔面600族は見慣れてるから」で「スゲェ」ってなりました。私は何回見ても慣れる気がしません…。次の更新、楽しみにしてます! (9月3日 16時) (レス) id: 4dfbfc9ed5 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 息抜きさん» 返信ありがとうございます!読みづらいことは無いです!普段pixivで読んでいるので、名前変更は出来ても出来なくてもそんな気にしてないので!ただ仕様なのかどうなのか気になっただけです!返信ありがとうございました!これからも楽しみにしています! (6月4日 18時) (レス) @page16 id: 199d1c4ec1 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 霧さん» コメントありがとうございます! くるっぷには占いツクールの様に、名前表記を変更する事が出来ないんです😭 読みづらくて本当に申し訳ないです…… (6月3日 22時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します!いつもワクワクしながらこの小説を読ませていただいております!主にpixivで読んでいるのですが、くるっぷというサイトでも小説読みました!質問なんですが、あの(名前)は変更できるのでしょうか?それともそういう仕様なのでしょうか? (6月2日 22時) (レス) @page17 id: 199d1c4ec1 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - ほしくずさん» お待たせして申し訳ありません。昨晩から色々と方法を試してみたのですが、いまいち進展がなかったので、くるっぷというサイトも使用してみる事にしました。わざわざアプリを入れる手間をかけて頂いたのに、解決策を見つけられず申し訳ないです……。 (5月25日 13時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:息抜き | 作成日時:2022年12月28日 22時

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