路地裏にて、── 三 ページ5
「……次は、」
一切の表情を感じられない顔でAがポツリと話し出す。ヴェルレエヌは黙って続きを促した。
「次は如何する心算でしたか」
「次、だと?」
「えぇ。私を殺した後、貴方は如何行動する心算でした? まさか、次は私の家族を狙う……だなんて事、云いませんよね?」
ヴェルレエヌはそう問いかけるAをじっと見つめた。
此処で冗談でも肯定すれば、何かまずい事が起こるな。
彼の培ってきた経験が、そう予感させた。
*
「安心しろ。君の家族を如何こうする心算は微塵もない。今回の件は、最初から君だけが狙いだった」
そう云っても未だに疑う様な目線を寄越すAに、ヴェルレエヌは眉を下げて困ったかの様に笑った。
「参ったな、全く信じてくれそうにない」
「自分を殺した相手のことを信じろって? 随分と無茶を云いますね」
二人は暫く睨みを利かせていたが、先に折れたのはAの方だった。この儘睨み合っていた所で、埒が明かないと判断したのだ。
「判りました。一万歩程譲って其の話は信じます。ですが動機は? まさか中原君が私を殺せ、なんて事を云うなんて考えられません」
「あぁ、其の通りだ。中也はそんな事を願わないだろうな」
「では、何故?」
「君が、中也の心に関わる人間の一人だと判断したから殺した。何せ俺は、中也に宣言したからな。『お前の心に関わる人間を、全員暗殺する』と」
「え?」
其れ迄様々な感情が渦巻いていたAの頭は、困惑一色に塗り替えられていた。
*
「中原君の兄……ですよね?」
「あぁ」
「なんでそんな事を? 彼の心に関わる人間全員を暗殺だなんて」
Aは『そんな事は出来っこない』とは云わなかった。既に一度殺されて、彼の暗殺の腕前は素人なりに分かった心算だ。きっと本気を出せば一日足らずで完遂するだろう。
彼女が云いたいのは、何故『兄』だと名乗っていながら中也の心を壊してしまいそうな事を計画しているのか、だ。
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黒猫 - pixivの方でコメントできないのでこちらでさせていただきます。相変わらず面白かったです!他の小説も読ませていただきました。ポケモンの「顔面600族は見慣れてるから」で「スゲェ」ってなりました。私は何回見ても慣れる気がしません…。次の更新、楽しみにしてます! (9月3日 16時) (レス) id: 4dfbfc9ed5 (このIDを非表示/違反報告)
霧(プロフ) - 息抜きさん» 返信ありがとうございます!読みづらいことは無いです!普段pixivで読んでいるので、名前変更は出来ても出来なくてもそんな気にしてないので!ただ仕様なのかどうなのか気になっただけです!返信ありがとうございました!これからも楽しみにしています! (6月4日 18時) (レス) @page16 id: 199d1c4ec1 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 霧さん» コメントありがとうございます! くるっぷには占いツクールの様に、名前表記を変更する事が出来ないんです😭 読みづらくて本当に申し訳ないです…… (6月3日 22時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
霧(プロフ) - コメント失礼します!いつもワクワクしながらこの小説を読ませていただいております!主にpixivで読んでいるのですが、くるっぷというサイトでも小説読みました!質問なんですが、あの(名前)は変更できるのでしょうか?それともそういう仕様なのでしょうか? (6月2日 22時) (レス) @page17 id: 199d1c4ec1 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - ほしくずさん» お待たせして申し訳ありません。昨晩から色々と方法を試してみたのですが、いまいち進展がなかったので、くるっぷというサイトも使用してみる事にしました。わざわざアプリを入れる手間をかけて頂いたのに、解決策を見つけられず申し訳ないです……。 (5月25日 13時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:息抜き | 作成日時:2022年12月28日 22時