イノチゴイ【WT】 (ページ6)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:2,023 hit

6. ページ6

そこからの出来事は云うなれば電光石火。

Aが男がいなくなったと理解して後ろを振り向き始めたと同時に聞こえたのは3発の銃声。
振り返りきった時には、男がちょうど宝条の首を持っていたナイフの柄の部分で突き、気絶させたところだった。
軽機関銃が床に打ち付けられ、スタンドの部分が破損する。一連の流れに狼狽えて武器を落とした部下の1人が腰を抜かして男に乞う。

「い、命だけはたすけｯｯｯｯア"」

男は無慈悲にナイフでその部下の首を掻き切る。ペチンと身体が床に叩きつけられる音がして、暫くするとそれは動かなくなった。
目の前で起きた全ての出来事の凶徒は今死んだ男のことなんて気にもしていない。この世界ではそんなもんだ。

ここまでにかかった時間はわずか3分足らず。

流石に圧巻といったところか。Aは近接戦には慣れていないため、ただことが進んでいくのを呆然と眺めていることしかできなかった。

男の視線がゆっくりとAに向く。
この状況で奴に肉体戦を仕掛けるのは愚かな人間がやることだ。勝ち目なんてものはない。
Aは懐からあるだけ武器取り出すと、床に投げ捨てて両手を上げた。

「降参です、話を聞いてくださいませんか。」

・

その問いかけに答えたのは未だドアの外に立っていた金髪の男だった。

「ああ、大丈夫。君は殺さないよ。」

唐突に後ろから声をかけられて少し驚いた。手を上げていたため十分に振り向けなかったが、殺さないとのことだったのでゆっくりと両手を下げて振り返る。ピリピリと強張っていた全身の筋肉の力が徐々に抜けていくのがわかる。

「えーっと、一応確認だけど君が『黒の狙撃手』であってる？」

「まあ、はい」

「了解、じゃあ着いてきて。俺らが本当のクライアントだから」

余計な会話は一切しないタイプ、いつもなら助かるけど流石に今の一件があってからだとちょっと冷静すぎて怖い。
金髪の男はじゃシャークん行こ、と小柄な男に声をかけて階段を登っていく。

そうか、クライアントということは彼らが『WT』。
想像していた人物とは程遠かったが確かに実力は本物だ。それに一応助けてもらった身だ、まだ礼も言えていない。
とりあえず私は大人しく2人の後を着いて行くことにした。