【Ｋ】薄幸蝶々の願い事

美しい蝶 ページ7

〜伏見☆Side〜

――『救って欲しい子は、本殿から離れた小さな建物にいる』

その言葉の通りの場所に行くと、
神社の関係者だろう数人が倒れていた。

よく見ると、近くの地面には矢が刺さっていた。

伏見「あの男･･･」

先に手を回してやがったのか。

小さな建物の見張りは、
地面に倒れて安らかな寝息をたてていた。

その間をすり抜けて、小さな建物の扉を見上げた。

扉一面に、神社特有の――魔除けの札が貼られていた。

伏見「･････」

気味が悪い。
扉の向こうには一体、どんな奴が――

伏見「････伏見――抜刀」

すらりと剣を抜き、しっかりと握り締める。

そして、勢いよく目の前の扉をぶっ壊した。

暗い、小さな部屋の中。

そこには檻があって――

伏見「っ････!」

その檻の中の――“蝶”を見た瞬間

――心臓が止まった気がした。

銀色の長い髪に
綺麗なマリンブルーの瞳。

雪のように透き通った、真っ白な肌

白と赤の巫女服を着た
――美しい蝶

綺麗な瞳から零れた涙が、
光に反射して銀色にきらりと光って落ちる。

その姿に――思わず見とれてしまった。

なるほど。
確かに――“蝶”だな。

――『汝(なんじ)、捕らわれの蝶を救う者』

鉄格子に囲まれて、泣きながら震える“蝶”

――『蝶を縛る糸を切れ』

俺は、“蝶”を捕らえる檻を睨んだ。

黒い檻はすでにさび付いていた。

一体、どんだけ長い間コイツは――ここにいたんだ?

俺の中のイライラが、大きくなる。

今すぐ――壊してやりたい。

でも――

あ「っ･･･だめ」

目の前の蝶は

泣きながら
震えながら

そう呟いた。

あ「私は･･･」

――あぁ、イライラする。

あ「ここから――出られ、ない････」

――嘘つき

聞こえたぞ。

“助けて･･･!!”

お前の――心の叫びが。

聞こえた瞬間、
俺は目の前の檻に精一杯の怒りをぶつけた。

さび付いた檻は呆気なく、簡単に壊れた。

ほら見ろ。
お前の願いは――俺にとっては簡単過ぎる。

“蝶を捕らえる糸は切れた”

もう、蝶は自由だ。

けど、はばたける羽はあるのに
蝶は――飛び方を知らない

伏見「お前の本当の願いは何だ」

あ「っ････あ」

伏見「言え」

あ「････っ」

伏見「俺が叶えてやる」

だから

あ「っ････ここから、出して」

お前の言葉で――聞かせろ

あ「私を――助けて････っ!!」

その願いに、俺は手を伸ばした。

お前に出来ないなら
――俺がやってやる。

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