Episode6 -3 ページ38
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飲むまで帰さないって言って、私を見つめた大きな瞳を思い出して、ほんのちょっとだけ泣きそうになる。
「二宮先輩って見かけによらず優しいとこありますよね」
「はあ？俺はいつでも優しいっつーの」
「そうですかねぇ」
「潤くん、仕事増やすよ？」
「なんでもないです。二宮先輩はいつも優しいです。ですよね、瀬那先輩。……瀬那先輩？」
「瀬那？」
私がそんなな顔をしたからか、二人がそろって言葉を止めて少し心配そうな表情でこっちをみた。
結局二人とも、最後には優しいから困る。
昔のことや家族のことを私が何もしゃべらなくても、気にせずにそばにいてくれた二人が、とても愛おしくなった。
「ううん…なんでもない。ありがとう、私帰るね。帰って、寝て……ポンコツ直してくるよ」
「はい。それがいいっすよ瀬那先輩」
「俺はいつものポンコツ具合に直せって言っただけだから。ポンコツ直すほど無理しなくていいから」
「もう二宮くん、ポンコツポンコツ言い過ぎ」
「潤くんも認めてることだから」
「いや、俺はそんなこと言ってませんよ？」
「言ってたよ」
「言ってたよな」
「ええ……」
眉を下げて困り顔をする松本くんにもう一度笑ってから、私は自分の荷物を手に取った。
私のミスなのに文句ひとつ……や二つは言ってるけど、助けてくれる仲間に恵まれている。
その事実が、沈んだ心を少しだけ救い上げてくれる気がした。
「それじゃあ、また明日」
「この貸しは高くつくからな」
「俺はKIWIでおごってくれるくらいでいいっすよ、瀬那先輩」
「うん、わかった。それじゃあ」
後ろから聞こえる二人の声を背に私は事務所を後にした。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年1月24日 21時
