Episode1 -2 ページ3
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「さみぃ」とお客さんの前で遠慮なくつぶやく彼は私の気になる男の子だったりする。
のだけど、当の櫻井くんは私のことがあまり好きではなさそうだ。
私がそう感じてるだけなのかもしれないけど。
「はいこれ、買ってきたよ」
「ありがとー！」
「じゃあ、俺入るから」
「うんよろしく」
短い会話のあと制服に着替えてカウンターに入ってきた櫻井くんはいつもと同じクールな表情を浮かべていた。
ちょっと近寄りがたい雰囲気で普通の人には気やすく話しかけづらいと思うんだけど、お酒の入った多江ちゃんはそんなのお構いなし。
本日三杯目のビールをグイっと煽るとニコニコした表情で櫻井くんに話しかけた。
「ねぇ、櫻井くんはいつ？初恋」
「は？」
グラスを拭いていた櫻井くんが形のいい眉を怪訝そうにひそめる。
それがちょっと若い男の子って感じがして可愛い。
「Aがもったいぶって教えてくれないの。ひどいでしょ？」
「ちょっと多江ちゃん！」
「だから櫻井くんに聞こうと思って」
腕を引っ張って止めてみるけど多江ちゃんは止まりそうもない。
櫻井くん明らかに表情が険しいからやめたほうがいいと思うんだけど、残念ながら多江ちゃんには通じなかった。
「ねぇ、Aも興味あるでしょ？」
「ええ？いやそれは……」
答えづらくて口を紡ぐと多江ちゃんと相葉さんの視線が一気に私に注がれたのがわかった。
ちらりと様子をうかがってみたら櫻井くんは知らん顔でグラスを拭いている。
「……なくはない、けど」
多江ちゃんのキラキラした目に押し負けるようにそう口にすると「チッ」と櫻井くんが行儀の悪い舌打ちをしたのが聞こえた。
「だよね！Aも気になるよね！ねぇ櫻井くん、だめ？」
こてんと首をかしげながら多江ちゃんが櫻井くんを見上げてるけど、櫻井くんはさっきと同じ知らん顔でさらりと多江ちゃんを無視…しようとして、その視線に耐えかねたのかあきらめたようにもう一度チッと舌打ちをした。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年1月24日 21時
