Episode4 魔法のキャンディ ページ20
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十四時から始まった法事はつつがなく食事会までを終え、解散して帰りの電車に乗るころには太陽が地平線に落ちる頃だった。
冬の夜は長い。
ふらふらと帰り道を歩きながら、私は丸い月を見上げていた。
確かに私は昔から忘れっぽいほうだった。
特にここ二年くらいは昔の記憶をあんまり思い出せなくなっていて、友達と学生時代の話なんかになるとちょっと困ったりもしていた。
でも、母もどちらかというと忘れっぽいタイプだったし遺伝かななんて軽く思っていたのだけど。
お酒をいっぱい飲んだはずなのにアルコールが回った感じのしない頭の中では、昼間の悟くんとの会話が繰り返し再生されている。
“いや、そもそも、Aちゃんがお葬式で泣いてた記憶がないんだよなぁ……全然”
“Aちゃん、おじさんのお葬式でも泣いてなかったから”
悟くんたちの話を総合するに、おそらく私は祖父のお葬式で泣かなかったのだろう。
それならば悟くんに慰めてもらったという私の記憶は何だったのか。
「誰かと間違えてる……って、誰と…？」
問題なのは、その“誰か”に全く心当たりがないことだった。
私には幼馴染と呼べる相手はいないし、その当時特別仲の良かった男の子が学校にいたわけでもない。
でも私は確かに、泣きじゃくって誰かに慰めてもらったのだ。
同じくらいの歳の、男の子に。
“あの子と間違えてんじゃねぇか？ほら、Aちゃんがいつも一緒にいたらしい男の子”
悟くんの言葉がよみがえって、私は歩く力を失くしてその場に立ち止まった。
“結婚の約束したとか言ってた”
悟くんの言葉を思い出すたびに、矛盾する記憶が思い浮かぶ。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年1月24日 21時
