Episode3 -6 ページ19
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思いもよらない言葉が悟くんから飛び出したのと、後ろから声をかけられたのはほとんど同時だった。
「そういえばAちゃん、ご両親のことは残念だったわね……」
「……あ、はい。大したご挨拶もできずすみません……」
「いいのよ、若い子一人で大変だったでしょうし」
朗らかな笑顔で笑うその女性はどこか見覚えがあった。
「母さん」
「悟、ちょっとこっちでお酒付き合いなさい」
「はいはい。ごめんAちゃん。ちょっと行ってくるわ」
「うん。行ってらっしゃい」
そうだ悟くんのお母さんだ。
悟くんに似て優しそうな顔立ちで、実際優しかったような気がする。
幼いころの記憶だからあいまいだけど。
「ねぇAちゃん、ご両親失くした後に思いっきり泣いたりはした？」
「そりゃあ…多少はしましたけど……どうしてですか？」
「Aちゃん、お義父さんのお葬式でも泣いてなかったから、泣くのが苦手なのかと思って。よかった、そんなことないのね」
「え……？」
悟くんのお母さんは優しい表情で笑ってくれたけど、対照的に私は自分の顔から一瞬で表情が失くなっていくのを感じた。
悟くんとの行き違いなら小さいころのことだからで済むことも、当時大人だった悟くんのお母さんに言われてしまうとどうしようもない。
「あ、あの、おばさん…一つ聞いてもいいですか？」
「あら、なぁに？」
「私おじいちゃんのお葬式で泣いてました？」
「……？泣いてなかったわよ、まったく。悲しい顔はしていたけどね」
正直そのあとのことはほとんど覚えていない。
結局悟くんに私が結婚の約束をしたという男の子のことを聞き返すことはできなくて、お酒も結構飲んでみたけど全然酔えはしなかった。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年1月24日 21時
