ねがいごとキャンディ ○2○ 《ars/s.s/0125》 (ページ8)

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Episode8 -8 ページ8

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私を見上げる彼の視線と、彼を見下ろす私の視線が交差する。

これから私がするのは咄嗟の衝動じゃない。

小さく一度だけ息を吸って、私は口を開いた。

「ねがいごとキャンディ…お願い」

「！やめろっ…」

咄嗟に伸びてきた櫻井くんの腕を体をねじってよける。

「やめろ！アンタは……っ、アンタだけは何も知らなくていい……！」

悲痛な櫻井くんの叫び声に、私は必死に首を横に振った。

「嫌！私は知りたい。私のことを！」

私の剣幕に押されたように、櫻井くんがこぶしを震わせながらわずかに視線を逸らす。

そして、私はその願いを口にした。

「お願い、私の記憶を戻して！」

思い切り、渾身の力でキャンディをかみ砕いた。

その瞬間。

世界は急速に回り始めた。

一気に頭の中に流れ込んでくる情報に頭がクラクラして、体制を保てなくて崩れ落ちる。

「A…っ」

櫻井くんの腕に抱きとめられたのがわかったけれど、返事をすることはできなかった。

ただ誰よりも安心するぬくもりに身を預けて、私は静かに意識を手放したのだった。

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