ねがいごとキャンディ ○2○ 《ars/s.s/0125》 (ページ27)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:138,766 hit

Episode11 違う二人ページ27

.

身支度を済ませてリビングに戻ると、相葉さんが読んでいた新聞から顔を上げた。

「お、可愛いね」

「ありがとうございます」

ニコニコ笑った相葉さんが「ちょっとおいで」と向かいの席を指さす。

言われた通りそこに座ると相葉さんがひょいと新聞をソファへ放り投げた。

「翔ちゃんがいつも新聞読んでたからさ、なんか習慣が移っちゃって俺も読む癖がついたんだよね」

「そうなんですね」

「活字読むのって苦手だったんだけどさ、翔ちゃんって本読むの好きだし、一緒にいるうちに俺も少しずつ読めるようになってね、それってやっぱり俺と翔ちゃんが長い子と同じ時間を共有したってことじゃん？」

「そう、ですね」

相葉さんが何を言いたいのかわからなくて、私は内心首をかしげる。

すると私の気持ちを感じ取ったのか相葉さんが笑いながら言った。

「ごめんごめん、そんな不思議そうな顔しないでよ」

「すみません…」

「いいけどね。いや、何が言いたいかって言うとさ……」

そこで一度言葉を区切った相葉さんが、

「ねぇ、翔ちゃんがどうして君の記憶を消したのか知りたい…？」

唐突にそう言った。

あまりにも直球な相葉さんの言葉に咄嗟になんて答えたらいいかわからなくて反応できなかった。

「沈黙は肯定と受け取ります」

「え？」

「って、翔ちゃんにも言っておいたから」

そんな私を気にするでもなく、相葉さんが悪戯っ子のように笑った。

.