Episode10 -4 ページ24
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今日は店はほかのみんなに任せたから翔ちゃんと俺はお休みなんだ、なんて何でもないことのように言って、相葉さんは空になった朝ごはんの食器をもってキッチンへと消えていく。
窓の外はまだ晴れていて、ベランダの物干しざおに止まった雀が知らん顔してチュンと鳴いた。
「あ、そうだ。瀬那さんの服だけどね、翔ちゃんの部屋のタンスに一組だけあるって翔ちゃんが出てくときに言ってたから」
思い出したように相葉さんがキッチンからひょっこり顔を出す。
食器を洗う水洗の音に負けないように少しだけ大きな声で。
「わかりました」
翔の部屋は、翔の香りがするからあんまり戻りたくない。
けど、今私が着てるのはその翔自身が身に着けていたものだから、今のままではどっちにしろつらいだけ。
そう思いなおして私は重い足を翔の部屋に向けた。
昨夜と違って朝の明るさの中で見る翔の部屋はすごくシンプルだった。
五、六帖くらいの部屋にはベッドと机とタンス、それから照明器具と小さめのチェストが置かれているだけ。
どれも翔の趣味というよりは単純に必要だから置いてあるという印象で、ああでも昨日寝てみてわかったけどベッドの掛布団は翔の趣味だと思う。
触り心地がよかったから。
お目当てのタンスを上から順に開けて、三段目で私は目的のものを見つけた。
「あ、これ…」
昔、翔の家に泊まるときとかに着れるようにって置きっぱなしにしていた白地に花柄のワンピース。
ピンクや赤で描かれた花が可愛いと翔が気に入っていたから、これを選んで翔の家に置いていたもの。
「ここにあったんだ」
失くしたと思ってた。
でも今思い返せば、翔が姿を消す前に翔の家にあった私の私物を返しに来た時にこれだけ返ってきてなかったってだけなんだね。
私はその出来事そのものを忘れていたわけで、なぜかわからないけどどこかに行ってしまったんだと思ってた。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年2月6日 21時
