ねがいごとキャンディ ○2○ 《ars/s.s/0125》 (ページ33)

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Episode12 -3 ページ33

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「あ、ねぇ翔、また喧嘩したの？」

白い腕にあざを見つけて私が言うと、翔は面倒そうにチッと舌打ちをする。

「ちょっと転んだだけだって」

「もう、おばさんもきっと心配してるよ？」

「お前にはカンケーねぇだろ」

「関係なくないよ。翔がケガしてるのは見たくない」

「……そうかよ」

「それで、今日もまた喧嘩するの？」

「……喧嘩じゃねぇ。仲間がやられたから、お返ししに行くだけ」

「それを喧嘩って言うの、もう」

何を言っても無駄なことは私も分かっていた。

これはあいさつのようなもので、私たちにとってはコミュニケーションの一つだった。

一折分長くしたスカートを私が翌日には元に戻すことも、転んだだけだと言い張る翔がまた喧嘩をしに行くのも、いつも何も変わらない。

私たちの日常だった。

私たちは兄弟のようなもので、家族のようなものだった。

傍にいるのも、優先するのも、スカートの長さを気にするのも、喧嘩の傷を気にするのも、そんな私たちの距離感だった。

そんな日常が少し変わったのは、私が高校を卒業する少し前のことだ。

父が人を殺した、ほんの一週間ほど後。

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