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｢あなたを見てると吐き気がするわ｣
リリーはきつい眼差しをジェームズに送った。まぶたが震えている。
｢リリー？｣
別の女の子が中庭に様子を窺いながらやって来る。
黒髪を肩まで伸ばし、前髪がすこしかかった紫色の瞳はアメジストのように憂いを帯びている。
近づいてくる女の子を見たリリーは、一瞬安堵したようにみえたが、すぐに悲しい表情をみせた。
｢ああ、A……今は、その、一人にさせて｣
やるせなさを抑えきれなくなっているリリーは、苦しげにAに申し訳なさそうな視線を流した。
Aが心配そうに頷くと、リリーは走ってどこかに行ってしまった。
Aは、姿が見えなくなるまでその美しい茶髪を見詰めると、すぐに振り返って厳しい目を四人に(主にジェームズに)向ける。
先程までのリリーに向けた表情とはまるで違う。
長い前髪はより瞳を隠し、その顔には憤りが見えた。
｢またやったんだね？ずっと言われてたのに。こうなることはわかってなかったの？｣
怒りを帯びているわりに、その声色は低く、ひどく冷淡だった。
｢なんだよ。君には関係ないだろう｣
ジェームズが不機嫌そうに吐き捨てた。
反省の色はまったく見せていない。
シリウスは、スネイプを虐めていたときとリリーが走っていったときは何でもない顔をしていたが、Aの言葉を聞くとすこしばつが悪そうな態度になった。
リーマスは今や本から目を離してAを穴が開くほど見詰めている。
後悔の念が見えた。
ピーターはこの喧嘩の行く末はどうなるのかとはらはらしている。
｢リリーの友達であることが関係の無いことだったら、そうだけど｣
｢あいつが悪いんだ……スネイプが！スネイプの肩を持つのか？｣
｢ジェームズ。私はセブルスについては何も言ってないだろ｣
Aは心底無関心そうに呟いた。
四人の強ばった顔に、若干疑念があらわれた。
｢君たちにこのことでどんな不都合が起ころうが、セブルスが傷つこうが、どうでもいい。
私が心配しているのは、リリーだけ。
あんなに純粋で美しい女の子が傷つけられるのが、許せないんだよ｣
実にフラットで何にも執着しないような物言いで、Aは言ってのけた。
四人はおかしなものを見る目でAを見た。
｢ジェームズ。君みたいな傲慢で独り善がりの怠け者に、リリーを渡すわけにはいかないんだ｣
｢──ッ。なんだと、このアマ…………！｣
続く (更新停止中)
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作者名：霧崎 | 作成日時：2018年5月13日 16時
