伝 え た い 。(参) 【鬼滅の刃】

弍拾伍 . 鶴と願掛け ページ18

・ ※無一郎side



屋根を打ちつける音。
…雨か。


A、大丈夫かな。
居場所が分からないから、迎えに行こうにも
行けないけれど。


こんなに雨が降っているのだから
そのうち、帰ってくるだろうし。



……いや、やっぱり探しに行こう。心配だし。

Aが行く当てにしそうなところと言えば、
甘露寺さんの屋敷かな。それか、蝶屋敷。



玄関を出て暫く歩いていると、遠くから羽ばたいてきた
銀子が胸に飛び込んできた。




「…どうしたの、慌てて」


「タ、大変ヨ！！」




銀子の慌てた様子に、すごく胸騒ぎがした。




「アノ子ガ！！鬼二襲ワレテ…！！！」




恐れていた、最悪の事態が起こってしまった。




「…場所は？」


「オ、落チ着イテ！！」


「落ち着いてるよ。早く場所を教えて」


「鬼ハ、モウ死ンダワ！！デモ、アノ子ハ重症デ
蝶屋敷二…！！」


「…そう」




蝶屋敷に急ごう。
A…どうか、死なないで。




「(アンナ二憎(ニク)シミヲ込メタヨウナ顔、初メテ見タワ…)」



* * *

「Aさんですが…鬼の毒にやられてしまって
酸欠状態が続いていたものですから、もしかすると…」




胡蝶さんは、言いづらそうに目を伏(ふ)せた。




「…脳細胞は酸欠に非常に弱く、酸欠状態がおよそ5分
続くと壊死(えし)してしまうと言います。もしかすると、
Aさんの意識が戻っても何か後遺症が残るかも
しれません」


「……そうですか。胡蝶さん、Aのいる部屋まで
案内してくれませんか」


「とても痛々しい姿ですが、それでもお会いに
なりますか？…時透くんには、辛いかもしれません」




「もちろんです。僕はAの恋人ですから」とは
言えなかった。


僕があの時、Aの事を追いかけていれば
こんなに酷い目には遭(あ)わなかったのに。

…僕には、Aの恋人を名乗る資格は無い。




「…覚悟は出来ています」



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