伝 え た い 。(参) 【鬼滅の刃】

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「雲行(ユ)キガ怪シクナッテキタワ…」




睫毛鴉が不安げに呟く。

見上げると、灰色の雲が空を覆い尽くしていた。
今にも雨が降りそうだ。




『鬼が出る前に、早く帰らなきゃ！』




太陽が隠れてしまえば、鬼は自由に動き回れてしまう。
一刻も早く下山して、安全な場所へ行かなければ
いけない。




「アンタ歩クノ遅イワ！！走リナサイヨ！！！」


『だって、足場が悪いんだもん！転んで怪我したら
どうすんの！！！』


「鬼二遭遇シテ死ヌヨリ、転ンデ怪我シタ方ガ
マシデショ！？」


『た、確かに』




睫毛鴉に急(せ)かされ、歩くスピードを上げる。




「…アンタ、幾(イク)ツヨ？」


『え、16歳だけど？何いきなり』


「最近、決マッテ16歳ノ少女ガ夜(ヨ)ナ夜ナ攫(サラ)ワレル事件ガ
頻繁二起コッテイルミタイヨ」




私は思わず身震いした。




『こっわ！！何それ！？鬼の仕業(しわざ)！？』


「詳細ノ情報ガマダ何モ無イカラ一概(イチガイ)ニハ言エナイケド
ソノ可能性ハ高イワネ」


『そんな変態鬼に捕まるとか死んでも嫌なんだけど』




ぽつぽつ…と空から水滴が落ちてきて、
地面を濡らす。…雨だ、最悪。


雨から身を守るように両手を頭上に乗せて下山をする。




「危ナイ！！！」


『うわぁぁぁぁっ！？』




突然、睫毛鴉が右頬めがけて体当たりをしてきたので
私は左側に向かって派手に倒れた。




『痛っ…！？』




右肩に痛みが走り、目線を向けると何故か
着物の右肩部分がビリビリに裂(さ)けていて鋭利なものに
引っ掻かれたような深い切り傷が出来ていた。




「クックック……。鴉に感謝するんだなｧ」




背後から不気味な笑い声が聞こえて、振り返ると
そこには鋭い爪から滴る私の血(・・・)を舐め取りながら
気味の悪い笑みを浮かべる " 鬼 " がいた。




「ククク…俺は運が良い。お前、稀血じゃねぇかｧ」


『…稀血って何？』




後ずさりしながら、鬼に質問を投げかける。

正直、稀血がどうとかすごくどうでも良かったけど
睫毛鴉が救助を呼んでくれるまでの時間を何とか
稼ぎたい。




「今から死ぬお前に説明したところで意味はねｪよ」


『…分かった。でも、これだけは言わせて。私、
こう見えて三十路(みそじ)です。16歳じゃないんです(嘘)』


「…はｧ？」




一か八かだったけど、しくじった。
コイツ、16歳の少女を攫う変態鬼じゃなかった。



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