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今日で、うらたと過ごせるのも最後かぁ…早かったなぁ…
なんて、長い校長先生の話を聞きながら考える。
しかし、もううらたと会えなくなるという絶望感で頭がいっぱいいっぱいの私には、内容が全く頭に入ってこなかった。
……そういえば、初めてうらたと話したのは、今日みたいな桜が咲く日だったっけ。
私達は三年前のこの日、たまたま隣の席になったことで、仲良くなった。
高校生になって最初の友達がお互い同士で、なんだか特別な存在になれた気がしていたんだ。
「……っ」
あれ?
泣かないって決めてたのに、最後にうらたが見る私の顔は、うらたが褒めてくれた笑顔にしようって決めてたのに。
なんでだろう?
涙が溢れて溢れて止まらないや。
「う………っ……」
自分の醜い嗚咽の声が彼に聞こえないように、口元を手で押さえていると、頭に忘れられない感触が走った。
コツン……
「……!」
かすかな期待を胸に視線を下げると、そこには折り畳まれた紙切れが落ちていた。
ヒラ…
『泣いてんの?』
いつもと変わらない文字に、少しの安心感と複雑な感情が流れる。
自分は紙なんて持ってないので、うらたが書いた紙の裏に自分も書いた。
『そうだよ、何か悪い?』
そう書き、後ろに回すと、またすぐに紙は回ってきた。
私が書いた文字の横に、少し不器用な文字で続きが綴られている。
『悪いし。俺、Aの笑顔が好きって言わなかった?まあ、俺はどんなAでも好きなつもりだけどさ』
「……!」
“好き”という単語を読んだ瞬間、自分の気持ちが溢れてしまいそうになって、後ろを振り向いた。
すると、うらたはそれを待っていたように私を見つめ、少し火照っている頬を手で隠しながら小声で話す。
「…見ただろ、それ。それが、俺の気持ち」
「気持ちって…えっと、あ……」
突然のことに驚くと同時に、自分の勝手な勘違いではないかという考えがよぎり、言葉に出来ない。
そんな状態の私を見た彼は、少しむすっとしたように頬を膨らませる。
「…なに?まだわからないの?だからさ……あ、ちょっと待って」
そう言うと、自分の胸ポケットに付いていたリボンを解き、なにやら文字を書き始めた。
「ほら、手出して?」
言われた通りに手を出すと、薬指にリボンが巻きつけられる。
『好きです』
「…!」
リボンに書かれていた言葉に驚き、目を見開くと、彼はニヤリと笑った。
「こっちのほうが、俺ららしいだろ?…俺と、付き合って下さい」
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作者名:フェレットみたらし団子 | 作成日時:2022年8月15日 19時