ar side ページ10
先ほどは叫びそうになったが自分がやけに冷静だと思った。なぜだかわからないが普段の自分よりも数倍物事を冷静に判断できていると思う。
大切なメンバーがいないと言うのにどうしてなのだろう。
「寝るも寝ないも自由だけどさ、寝ないで暇ならちょっと捜索手伝ってくんね？人手が足りてない。」
「んー、わかった。」
「あ、そうそう。大ちゃんってさ、昨日の帰り道伊野尾のことみたか？俺の記憶上だと見てないんだよね」
何を言っているんだろうか。そんなの見たに決まっている。ほら、帰る時もいたはず。めぐる思考と辿る記憶。神社に行ったときは、いる。神社から脱出するときも、いる。その後の帰り道だって…。いない。サァっと血の気が引いていくのがわかった。おかしい。どれだけ思い返しても俺が最後にいのちゃんをはっきりと見たのはいのちゃんと知念が走ってこっちにきた時で最後だ。帰り道で俺は一度もいのちゃんの姿を見てないし、声すら聞いてない。まぁ、あの日の帰り道は誰1人話していなかったのだけれど。
「大ちゃん、そんな俯いてどうした？」
いつの間にか地面と睨めっこしていた顔を起こす。
「いや何でもないよ。そういえば俺もいのちゃん見かけてないなーって。」
「そっか、やっぱそうだよな」
「ところで、薮ちゃん。最後にさ、神社の鳥居くぐったのって薮ちゃんと高木だよね？」
「うん。そうだけど」
「その後誰も出てきてないよね？」
「そうだけど何？」
「じゃあ薮ちゃんってさ、鳥居から出てきた後にいのちゃんみた？てか、いのちゃんが出てるとこみた？」
最後尾にいた薮ちゃんならわかるはずだ。途中までは最後尾はいのちゃんであったが鳥居をくぐった時の最後は高木と薮ちゃんである。つまり、だ。もし薮ちゃんが見ていないとなると最悪なことになる。
もし高木も見てないとなるとその最悪な状況がほぼ確定することになる。縋る思いで薮ちゃんに問えばゆっくりと左右に振られる首。
困ったことになった。
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作者名：悠璃 | 作成日時：2024年1月21日 12時
