ar side ページ6
「山田、なんかあいつらはしゃいでね?」
「知念と裕翔はまだしもいのちゃんがあそこまではしゃいでるの珍しいよね。てか、俺らのことおいてあいつら競争してたの?何歳だよまじで」
「なんか伊野尾以外の2人は最後ダッシュしてたっぽいしな。」
「裕翔も知念も元気だね。まだまだ二十代って感じするよな。裕翔は三十路で知念ももうちょっとしたら三十だろ?」
「若いって感じするよね。あの2人についていけてる伊野尾くんも不思議だけどね。」
上でワイワイやってるなら下でもワイワイやっていいだろ、と対抗するかのように弾む会話。階段を登りながら話していたせいか、到着する頃には若干息が切れていた。
「お前ら遅くね?」
「そっちが早いんでしょ。」
「あ、見て!ここからだと景色が綺麗に見えるよ!」
登ってきた階段の方を振り返れば綺麗な景色が広がっていた。
階段を登り始める前は地平線にかかっていた太陽が跡形もなく沈んでおり、オレンジの光が微かに世界を照らしていた。
都市とは打って変わり人工的な光の少ない地域のためその景色はほとんどか黒であった。
黒と微かに混ざるオレンジ。夜空が発する黄色に青白。都市ではまず見かけることのない景色。
「あ、あれ!一番星じゃない?」
「ほんとじゃん!あれってなんの星座の星なんだろ」
「なんか本で読んだことあるけど、一番星って大抵は金星らしいよ」
「やっぱり、ここら辺は星が綺麗に見えるんだね」
ぼーっとその景色を眺めること数分。俺の視界の端で誰かが動いた。
「いのちゃん?」
「ん?俺がここにきた理由は神社にお参りしたくてきたの。俺はお参りしてくるけどすぐ終わるからここで待っててもいいよ」
「あ、まって」
いのちゃんの隣をキープし続けていた知念が不思議そうに問えばニコッと微笑んで答えるいのちゃん。そういえばそうだ。本来の目的はあくまでお参りであってこの景色はおまけ的なものだ。スタスタと神社へと向かう彼の背中を追いかける知念。
置いて行かれた6人で顔を見合わせる。
どうする?と全員の顔に描かれていた。
こんな時に自然と視線が集まるのは
「…俺ら8人できて伊野尾と知念しか挨拶しないのはよろしくないし、いくか」
頼れる最年長こと薮ちゃんであった。
その一言を聞いた瞬間に動き出す一同。
おそらくはこの一言があれば動く、と全員が決めていたのだろう。
先に進むあの2人の背中を追いかけて歩き始めた。
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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年1月21日 12時