どの手を掴むかは自分次第。 (ページ29)

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cn side ページ29

捜索自体は手伝う、で賛成なんだけどよくわからないとっかかりが僕の中にはあった。

それこそがもしかすると僕いのちゃん以外あの神社に立ち入れない可能性だ。
そう考える理由は簡単で、昨日神社を見つけた時、僕といのちゃん以外鳥居を見つけれていなかった。
ただそれだけである。
割と大きくて立派な鳥居だったが、神社は招かれざるものは迷子になる。ということもある。
普段はそんなこと気にしないのだが昨日の経験があの神社は本物である、と僕の脳に感覚に刻まれていてどうにもできないのだ。

もし、僕の想像が実際に起こった場合いくらだ大貴が頑張っても見つからないものは見つからない。
仕方ないなと思いつつちょっとキツく靴紐を閉める。

「知念？どうした？」
「ごめん涼介。僕先に行ってる。僕がいないと多分大貴神社に入れないからさ。涼介たちは周辺探しながらきてよ。」
「・・・。気をつけてね。」
「もちろん。」

涼介に断りを入れて旅館を飛び出す。
勝手に僕がいなくなってたら宏太たちはびっくりするだろうけど仕方ない。そこら辺は涼介がどうにかしてくれることを信じている。
正直まだ取れ切ってない足の疲労もあるがそんなの気にしてられない。
ジャンプ1の運動神経。
ここで全力を出せばもしかしたら間に合うかもしれない。
自分自身に暗示をかけてアドレナリンを全力で出して駆け抜ける。

昨日通った橋が見える。その脇に川を見ながら佇む一人の女の子。
昨日はあんなに綺麗だった川はひどく濁って透明度を失っていた。

「あなた、アノヒトのところに行ってくれるの？」

時間が惜しくて無視しようを思っていたのに話しかけられちゃ罪悪感ってものに襲われる。

「アノヒト？が誰だか知らないけど僕は今急いでるからさ、ごめんね？」
「そっかぁ、そうだ！ちょっと前にありおか、だいき？って人がきたよ！！おともだち？」
「うん。おともだち。」
「じゃあきをつけなきゃダメだよ。あなたアノヒトにとられちゃうかも。」

ニコッと笑って再び川の方に向き直る女の子。
それ以上話しかけても返事は返ってこなくて無駄であることを察する。
僕がアノヒトとやらにとられるかもしれないらしいがそれはきっと女の子の妄想であると位置付けて再度足を動かす。

鳥居があった付近で停止して息を整え大貴を捜索する。
いた。
やっぱり見つけられなかったのだ。
こんなに近くに鳥居があるのに。
ふっと息を落として大貴に近づく。

「何迷子になってんの？鳥居こっち。」