どの手を掴むかは自分次第。 (ページ21)

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ar side ページ21

シャランシャラン。

オマエハニガサン。
鈴の音であったはずなのに確かにお狐様の声が乗っているように感じた。かつてないほどに回る足を止め後ろを振り返ると真っ黒な腕とそれに引き摺り込まれるようにして捕まっているいのちゃんがいた。

「だい、ちゃ、」

こちらに手を伸ばしそう呟く彼。そうか。あの時のぞわッとした感覚と鈴の音。それは今俺が目の当たりにしている光景が起こっていた時のものなんだね。君だけは神社から出られなかったんだ。ここの神様さみしんぼ。たくさんいるなら1人はアノヒトと。橋にいた女の子はそう言っていた。俺たちがここの神様やお狐様から逃げ切れたのは意図せず君が俺たちの犠牲になっていたからだったんだ。
前回もきっと君は手を伸ばしていたのだろう。でも誰も気づかなかった。君が1番後ろにいてみんな自分のことで手一杯だったから。
そしていのちゃんは1人気づいたんだ。自分が捕まればきっと俺たちは助かるって。だから声も出さずに抵抗しないで大人しく捕まった。
だが今は違う。
俺も知念も気づいている。みんなで無事で帰る。それだけでいい。
彼の手を握るだけでいい。掴むだけでいい。それだけでいいのに届かない。あと一歩。あと数秒。足りない。
“遅かった”

空を切るようにして下ろされた彼の手を誰かが確かに掴みなおした。

「何諦めようとしてんだ伊野尾。さっさと帰るぞ。」
「ははっ、帝王かよ」

いつも優しくどかっと後ろで構えてくれている頼れる最年長。彼がいのちゃんの手を強く握ってくれていた。それだけじゃない。うちの圧倒的エースや後輩の最年長。なぜかいつも髪色が奇抜な人に最年少の最高身長までじゃんぷ勢揃い。今ならまさにじゃんぷのよりどりみどりである。

「結局みんな集まっちゃうじゃん。せっかく起こさないよう俺1人できたのに。」
「俺のこと起こすために殴りかけた人がよく言うよ。」
「なっ！それはごめん」
「冗談だって」
「てかこの階段なんか段々と伸びてね？やっぱ旅館でゲームしてりゃよかった！」
「涼介のおかげでこっちは助かったんだけどねぇ。僕の幻聴かと思ったらほんとに来てたとは驚き。」
「え、なんか俺気づかないところで人助けしてたの？」
「まぁそんな感じ」
「いい加減この階段降るの疲れたって！」
「光お前ここ来たばっかだろ」
「あ。俺ここの出方わかるかも！」
「「「「「「「まじで？！」」」」」」」