どの手を掴むかは自分次第。 (ページ14)

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ar side ページ14

「何迷子になってるの？鳥居こっち。」

後ろから声をかけられて、驚いて振り向けば若干息を切らした知念がそこにいた。

「え、何でここにいんの？」
「説明は後でね。これが終わったらなんか奢ってよ？」

なぜ？と問えば、いいからさっさといくよ、とのご返答。この最年少恐るべし。
兎にも角にも、神社に入れないと言う問題は解決できたようだ。あとはこの壁のように見えるほど長い階段を登っていのちゃんをつれて帰ってくるだけである。
ふぅ。吐いて、吸って。もう一回吐いて、吸って。最後にふぅｯっと吐き出し顔をあげた。
これから始まる地獄の階段ダッシュに向けて息を整える。
運動神経グループ1何でもできる人こと知念を一度見つめてから頂上までの勝負の火蓋が切られた。
結果は惨敗、とまではいかなかったが敗北はした。途中まではいい感じに競っていたのだが終盤で体力が足りなくなり俺のスピードが落ちたことで勝敗が決まった。知念は階段ダッシュ前にもダッシュをしてきていたらしく、本調子ではなかった！と言うのが本人の言い分であるが、それでも俺に勝ったんだからいいだろう！！と言うのが俺の本音である。そんな言葉を胸にしまい再三戻ってきたこの境内。来た時と見た目は何も変わっていないように見えるが、仄かに霞む紫黒のモヤとその独特な気配は俺たちの警戒度をマックスにするのには十分であった。
肩でしてた息をどうにか落ち着け2人で一緒に歩きだす。

「ねぇ、大貴。このあとどうするの？」

ちょっとした沈黙。

「え、まさかここまで来て何も案とかなかったの？」

さらに長い沈黙。
えー、私、有岡大貴。図星を突かれすぎてぐうの音も出ません。何を隠そう、神社に行けば何か状況が変わるものだと思っていたので特に案なんてなかった。九割型勢いで出てきてしまっているからそんなこと考えてなかった。これが全てである。
そんな俺をまじまじと見つめて、はぁ、と思いため息を吐いた知念。

「つまり大貴はその場の勢いだけでここにきたから特に案もなく僕に言い返すことすらできない。だからそうやって突っ立ってるわけね。」
「その通りです」

全てが知念のお見通しであるようにも思えた。まるで俺の顔に全部書いてあったかのように考えを見透かしていた。

「だって大貴全部顔にかいてあるからそれを読み上げただけだよ。」

訂正。「書いてあったかのように」ではなく「書いてあった」の間違いだったようだ。どこまで俺の心を読んでくるのだろうか。