ar side ページ11
これはこんな深夜ではあるがとある男を叩き起こして真相を聞かなければならない。もし、誰かが見ていたのなら、彼はどこかを彷徨っていることになるだろう。ここの旅館の場所がわからなくなって辿り着けていないはずだ。しかし、誰も見ていないとなると、アソコにまだ彼はいることになる。それはとってもまずいことだ。なぜまずいかなんて知らないがとにかくダメな気がするのだ。
俺だけかもしれないが、ナニカに心臓が掴まれているような気配のする場所だ。ずっとそこにいていいことなんてあるはずがない。
「薮ちゃん。高木の部屋どこ。」
「はぁ?そこの廊下曲がってすぐの部屋だけど。何するつもり?」
「鍵借りてくる。高木にも聞かないといけない。」
「何聞くんだよ。てか高木まだ寝てるんだからそっとしといてやれよ。」
「いのちゃんがあの神社にまだいるかもしれない。だから高木に薮ちゃんと同じことを聞く。もし、いのちゃんのことを見たのならそのままここら辺を捜索するし、首を横に振るのなら即刻神社に行く。」
言い切った後にズカズカと廊下を進む。本来ならばここら辺で薮ちゃんの静止の声が聞こえるのだが、どうやら俺についてきているらしい。おそらくは俺の言葉の意味を理解しているのだろう。
受付で鍵をもらおうとしたが案の定突っ返された。
やむをえずそのまま彼の部屋の前に行きドアを叩くことにした。
拳を振り上げ思いっきりノックした。
はずだった。
「いやあっぶな!」
俺の振り上げ下ろした拳は木のドアを叩かず、目の前に現れた高木の体目掛けて落ちていった。途中で気がついたが止めることは叶わず申し訳ない気持ちで殴ろうとしたのだが高木の大きな手によってそれは阻まれた。
ひいては周囲の人々の眠りを妨げるような勢いで鳴らそうとした音が鳴り響くことなく目的の人物に話を聞くことが成功したのである。
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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年1月21日 12時