かなしいこのはなし。 ページ46
狗巻side
「僕は絶句したよ。硝子の読みは当たってたんだ。」
「名前を呼んだらさ、青白い顔でいつもみたいに笑うんだ。思わず抱きしめたら、すっごく冷たくてね。頭には雪が積もってるし、防寒具も何もなくて、裸足だった。」
「今すぐ家に入ってクソ親を殺してやろうかと思ったけど、彼女の安全が優先だったから、とにかく硝子のとこ連れて行った。」
「幸い低体温症だけで済んだ。命に別状はないって。」
「彼女を診た硝子がいろいろ教えてくれてね。Aの体にはひどい虐待の痕がたくさんあったんだって。それも巧妙でさ。人目にはつかないところにアザとか切り傷とかがたくさん。」
「特に酷かったのは火傷だって。いつもはポニーテールに隠れて見えないうなじに、タバコを押し付けられたみたいな火傷が一つあったんだ。1箇所しかないんだけど、皮膚が凹むくらいひどく爛れてて、硝子曰く、同じ箇所に何度もタバコの火を押し付けられたんじゃないかって。」
「もうその親を殺してやりたくなったよ。呪霊のせいにでもすれば、簡単に殺せるでしょ？･………結果的に殺さなかったし、あいつらは今でも生きてるけどね。」
「それから、すぐにAは高専で保護したよ。Aは虐待されてたこととかなんにも言わないから、僕らも聞くことはしなかった。」
「……僕はさ、最強とかなんとか言っておきながら、情けないよね。彼女の苦しみを何一つ感じ取れなかったんだよ。一緒に居たくせになんにも気が付かなかった。…ほんと、なさけない……。」
「Aがちょろいのは、幼少期から愛に触れることがなかったから。誰からも、愛してもらえなかったから。…だから、他人からの愛をなんにも疑わず、受け入れる。」
「……本来なら、そう言う環境で育てば、人間不信の臆病な性格に育つんだろうけど、彼女の人格は危ない方向にねじ曲がっちゃった。」
「…もっと早くに出会っていれば、僕が愛情たっぷりに育ててあげられたのに……」
「…ごめん、ごめんねA……」
僕たちはみんな、何も言えなかった。
想像もしなかったAの生い立ちに、ただただ茫然と立ち尽くすしかなかった。、
五条先生の顔は、涙に濡れていた。
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シシマチ(プロフ) - さざんかさん» コメントありがとうございます。楽しんで読んでくださって、とてもうれしいです。更新頑張ります！ (2021年6月14日 21時) (
レス) id: 6141eb3956 (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - わー！！気になるところで止まってらっしゃる；；更新お疲れ様です！めちゃ楽しませてもらってます！！続きも楽しみにしています！ (2021年6月14日 1時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
シシマチ(プロフ) - 43yomi1さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しい限りです。更新頑張ります！ (2021年6月11日 17時) (レス) id: 6141eb3956 (このIDを非表示/違反報告)
43yomi1(プロフ) - 初めまして！シシマチ様の小説とっても素敵で、思わず惹き込まれてしまいました…！更新楽しみにしてます…！！！！！ (2021年6月10日 15時) (レス) id: d2940ba0c0 (このIDを非表示/違反報告)
シシマチ(プロフ) - 小手鞠さん» コメントありがとうございます！更新頑張りますね(^^) (2021年6月10日 0時) (レス) id: 5733ebb1d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シシマチ | 作成日時：2021年6月3日 21時
