記憶がなくても。 ページ41
狗巻side
目の前で大粒の涙を流すA。
僕も何か声をかけてあげたかった。
でも言えない。
Aが少しでも僕たちに慣れてくれたらいいな。
『……いただきます』
と、Aが手を合わせて、小さくそう呟いた。
それから箸に手をつける。
でもうまく扱えないみたいだった。
察した僕はスプーンを差し出す。
『……ありがとう、ございます…』
「しゃけ。」
しかしそのスプーンでさえ、猫の手のように五本指で握って持っていた。
もしかしたら、今まで、箸やスプーンで食事させてもらえていなかったのかも。
ふるえるスプーンで、スープを掬って口に入れる。
そしたら、またAは涙を流した。
『……おいしい、です…』
「そりゃあよかった。ほら、ゆっくり食えよ」
「しゃけ。つな」
たまに、ほおについた米粒をとってあげたりしながら、食事は終わった。
やっぱり、Aのいる食事は楽しい。
たとえ記憶がなくてもね。
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シシマチ(プロフ) - さざんかさん» コメントありがとうございます。楽しんで読んでくださって、とてもうれしいです。更新頑張ります! (2021年6月14日 21時) (レス) id: 6141eb3956 (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - わー!!気になるところで止まってらっしゃる;;更新お疲れ様です!めちゃ楽しませてもらってます!!続きも楽しみにしています! (2021年6月14日 1時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
シシマチ(プロフ) - 43yomi1さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しい限りです。更新頑張ります! (2021年6月11日 17時) (レス) id: 6141eb3956 (このIDを非表示/違反報告)
43yomi1(プロフ) - 初めまして!シシマチ様の小説とっても素敵で、思わず惹き込まれてしまいました…!更新楽しみにしてます…!!!!! (2021年6月10日 15時) (レス) id: d2940ba0c0 (このIDを非表示/違反報告)
シシマチ(プロフ) - 小手鞠さん» コメントありがとうございます!更新頑張りますね(^^) (2021年6月10日 0時) (レス) id: 5733ebb1d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シシマチ | 作成日時:2021年6月3日 21時