食べて ページ36
五条side
現在午後6時30分。
もう立派な夕ご飯の時間だ。
Aの好きなデミグラスソースのハンバーグが載ったトレーを片手に、彼女の部屋をノックする。
「…A、五条先生だよ。ご飯持ってきたよ。」
案の定、返事はない。
「……入るね。」
扉を開けると、部屋の中は真っ暗だった。
もう冬だ。
日照時間も日に日に短くなる。
窓から見える月だけが、部屋をわずかに照らしていた。
夕飯のトレーを置こうと、テーブルを見たら、そこには全く手のつけられていない昼食が置いてあった。
サンドイッチはカピカピに乾いてしまっている。
「……」
夕飯のトレーを置いて、タンスの横の隙間を振り返った。
が、Aはいなかった。
代わりに、クローゼットの扉がわずかに開いているのが見えた。
静かに扉を開けると、洋服の隙間で、体育座りで眠るAの姿。
「……まったく、こんなところで寝ちゃ風邪ひいちゃうでしょ」
眠るAをそっと抱き上げた。
「……軽いね」
そのままベッドに寝かせて、毛布を掛けてやる。
「……おやすみ、A。いい夢を」
昼食のトレーだけを持って、僕は部屋を出た。
夜ご飯、食べてくれたらいいな。
そして、翌朝。
まだ、パンダは帰ってこない。
僕は朝食を持って、Aの部屋を訪れた。
数回ノックをして、返事はないから、扉を開けた。
「おはよう！A。朝ごはんの時間だよー、」
わざと元気よくそう言う。
昨日ベットに寝かせたはずの彼女は、また部屋の隅でうずくまっていた。
テーブルを見ると、昨日の昼食同様、全く手のつけられていない夕食があった。
また、食べてない。
このままじゃ、だめだ。
僕は、怯えた目でこちらを見るAの前まで行き、しゃがんで視線を合わせた。
「…A。ご飯食べないの？お腹空いてるでしょ？」
『………』
「Aの好きなバンバーグだったのに。食堂のおばちゃんがAの為にって、旗もつけてくれたんだよ？」
『………』
「……心配しなくても、なにも入ってないよ。Aの好きなものしかない。」
『………』
反応が全くない。
でもね、A。
君がずっとこのままご飯も食べないでいるつもりなら、僕も強硬手段に出るよ。
「……A、ちゃんと食べないとダメ。ずっとこのままでいるつもりなら、無理矢理にでも食べさせるから。」
そう言って、真剣な顔を見せると、Aは大粒の涙をこぼし始めた。
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シシマチ(プロフ) - さざんかさん» コメントありがとうございます。楽しんで読んでくださって、とてもうれしいです。更新頑張ります！ (2021年6月14日 21時) (
レス) id: 6141eb3956 (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - わー！！気になるところで止まってらっしゃる；；更新お疲れ様です！めちゃ楽しませてもらってます！！続きも楽しみにしています！ (2021年6月14日 1時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
シシマチ(プロフ) - 43yomi1さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しい限りです。更新頑張ります！ (2021年6月11日 17時) (レス) id: 6141eb3956 (このIDを非表示/違反報告)
43yomi1(プロフ) - 初めまして！シシマチ様の小説とっても素敵で、思わず惹き込まれてしまいました…！更新楽しみにしてます…！！！！！ (2021年6月10日 15時) (レス) id: d2940ba0c0 (このIDを非表示/違反報告)
シシマチ(プロフ) - 小手鞠さん» コメントありがとうございます！更新頑張りますね(^^) (2021年6月10日 0時) (レス) id: 5733ebb1d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シシマチ | 作成日時：2021年6月3日 21時
