てんごくへ ページ31
パンダside
医務室に入る。
奥のベッドには、頭を抱えてうずくまり、嗚咽をもらすAの姿。
俺はそっと近寄った。
「…A、目が覚めてよかった。なんか、大丈夫か？」
そう問いかけると、Aは今まで伏せていた顔をバッと上げた。
『……ようせいさん…？』
「…ん？妖精…？」
『…ようせいさんだよねっ！やっときてくれたの！？』
「え、っと」
話がよく掴めない。
俺はパンダだ。
でも今は話を合わせた方が良さそう。
「そ、そうだ、俺が妖精だ！」
そう言うと、Aは俺の腕を掴んで、身を乗り出した。
『…おそいよ！A、ずっとまってたんだよ！…はやくいこう！はやくつれてって！』
「…どこに？」
『…てんごくってところ！』
「……は？」
絶句した。
『いいこにしてたら、ようせいさんがあらわれててんごくっていうところにつれていってくれるんだって！ねぇ、はやくいこう！』
そう言うAの瞳は濁っていた。虚だった。
なにか、救済を心待ちにしているような顔。
正直、怖い。
「…そんなこと、誰に言われたんだ？」
『……おかあさん、だよ。でもおかあさんっていったらおこられるからだめなの』
「…っ、」
俺はどうしようもない気持ちになって、Aを抱きしめた。
『….、ようせいさんはあったかいね』
「あぁ、妖精だからな。A、天国には行けない。俺は連れて行ってやることができない。」
『…なんで！？…A、そのためにずっとがまんしてきたのに！ようせいさんも、Aにいじわるするの！？』
暴れるAを一層強く抱きしめる。
「…天国には行かなくても、そこより何千倍も楽しい経験が、Aにはできる。…だから、天国に行きたいだなんて言わないでくれ…」
そう懇願するように言うと、Aは静かになった。
そっと抱きしめる腕を離して、席を立つ。
『…どこいくの？Aもいく。』
「い、いやぁ、ちょっとそこまで、な。すぐ帰ってくるから待ってろ。」
『……』
俺は取り敢えず、医務室を出て、廊下にいる悟たちと落ち合う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シシマチ(プロフ) - さざんかさん» コメントありがとうございます。楽しんで読んでくださって、とてもうれしいです。更新頑張ります！ (2021年6月14日 21時) (
レス) id: 6141eb3956 (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - わー！！気になるところで止まってらっしゃる；；更新お疲れ様です！めちゃ楽しませてもらってます！！続きも楽しみにしています！ (2021年6月14日 1時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
シシマチ(プロフ) - 43yomi1さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しい限りです。更新頑張ります！ (2021年6月11日 17時) (レス) id: 6141eb3956 (このIDを非表示/違反報告)
43yomi1(プロフ) - 初めまして！シシマチ様の小説とっても素敵で、思わず惹き込まれてしまいました…！更新楽しみにしてます…！！！！！ (2021年6月10日 15時) (レス) id: d2940ba0c0 (このIDを非表示/違反報告)
シシマチ(プロフ) - 小手鞠さん» コメントありがとうございます！更新頑張りますね(^^) (2021年6月10日 0時) (レス) id: 5733ebb1d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：シシマチ | 作成日時：2021年6月3日 21時
