小町ちゃんはちょろかわいい2

束の間のしあわせ ページ21

真希side


今日は、担任がいないから、自習だ。

暇だ。


「なぁ、Aのとこいこーぜ」

「アイツは授業じゃねぇのか？」

「しゃけ」

「いや、どーせアイツも自習だって。最近呪術師忙しいし」

というわけで、Aのいるであろう3年の教室に向かう。

扉を開けると、そこにはポツンと席に座るAの姿。

普段のAと雰囲気があまりにも違すぎて、一瞬たじろいでしまったが

「おいおい、明かりくらいつけろっての」

パンダがパチっと蛍光灯をつけると、Aはこちらを向いた。

その顔はどこか悲しそうだ。

「遊ぼーぜ、A」
「しゃけ！たかな！」
『…うん』

雨の日はいつもそうだ。

Aはどこかに魂を置いてきたような顔をしている。

だから、雨の日はなるべくコイツの近くにいるようにしてる。

「たかな、つな？」
『うん。トランプする？』
「しゃけ！」

Aがトランプを取り出し、パンダが器用にそれを切った。

「…A、髪アレンジしていいか？」

『うん、もちろん』

いつになく膨らんだ髪を手櫛で解くと、さらりと指が気持ちいい。

そのまま三つ編みにして、後頭部でお団子にしてやる。

「よし、かわいいな」

『ありがとう。真希』

それから、みんなでトランプをしたり、ボードゲームをした。

そのうち飽きてきて、床に寝転がる。

みんなしてパンダにしがみついた。

「おー、甘えたか？」

「うるせー」
「おかか」


『……あったかいね』



そう、ぽつりと呟いたAの声は、少しだけ泣いているように聞こえた。









そして、その日はやってきた。



10月31日 渋谷事変

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