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氷と鬼 1 ページ33






一番、古い記憶は
寒くてボロい小屋の中

建てつけの悪い扉が
ガタガタと外からこじ開けられて

入ってきた
三つの個体が

まるでとても恐ろしいものを見てしまったような顔をして

とても・・・とても
大きな乱暴な声を出して


必死に俺に殴りかかった



痛い

痛い

痛い


それだけ。それしかなくて。
悔しかった。やられるがまま、視界が霞んだらもうそこからは死ぬのを待つだけで

その三つの個体が自分と同じ人間だったと知ったのは、あと4回、死んだあとだった。


安「・・・なんで何回も何回も、死ななあかんねん」


前世の記憶がある人間は
他には出会ったことない

俺は少なくとも
今生きている人生が5回目。

覚えてないだけで
もっと死んどるかもしらん

次はどんな風に死ぬんかな
誰に殺されるんやろう

それしか考えられなくなって



毎回毎回
全く違う人に違うやり方で殺されても

共通点が一つある



安「・・・寒い、なぁ」



吹雪の舞う冬に
必ず俺は死ぬんだ



安「・・・凍えそうやわ」


安「だれか・・・暖めてやぁ」


安「なあ・・・」



そうして少なくとも5回の人生を終えたとき
俺はもう、人間じゃ無くなった。


雪山に埋められた俺は
世界に絶望して


もう体温なんて無かった。
氷みたいに冷たくなった体も
全然寒くなくて


安「・・・今度は妖怪にでも生まれ変わったんか?」


怖くなった。どんな死に方をするよりも、今の自分の姿が一番怖くて

どうすればいいかわからなかった。

死んでも死んでも
凍っても弾けても潰れても

俺は俺のままだったのに

今の自分は
まるで違う生き物みたいだったから。




氷と鬼 2→←72



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猫彦(プロフ) - ゆうとさん» コメントありがとうございます。村上さんとしたい事をぎゅっと詰め込んだ作品です笑 読んでいただきありがとうございました。 (2018年2月20日 22時) (レス) id: 994f2131bb (このIDを非表示/違反報告)
ゆうと(プロフ) - はじめまして。ヒナちゃん特有の大人の色気が存分に発揮されて切なくもほっこりした素敵なお話でした。横猫にさらにほっこり!そして最後のすばるくんの位置づけにさらにキューンってなって満足感いっぱいです。違うお話も楽しみにしますね! (2018年2月20日 21時) (レス) id: 8103d530f2 (このIDを非表示/違反報告)
猫彦(プロフ) - ruruさん» まさかruruさんに読んで頂けたとは…驚きました。ありがとうございます。まだまだ至らない点も多々ありますがまた楽しんでいただけるような作品を書けるように精進します。本当にありがとうございました。 (2017年9月30日 21時) (レス) id: 9278fa5177 (このIDを非表示/違反報告)
ruru(プロフ) - はじめまして。面白くて一気に読ませて頂きました!久々にこんな一気読みをするお話に出会えました。ファンタジックな中に大きなテーマ、素晴らしいです。また読み返したくなるお話だと思いました。ありがとうございました! (2017年9月29日 2時) (レス) id: 26d316704d (このIDを非表示/違反報告)
猫彦(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます。読みやすいでしょうか…自分では癖がある文だな、と反省していたので安心しました笑 時間をいただくとは思いますが、また読んでいただけたら幸いです。 (2017年9月25日 18時) (レス) id: 9278fa5177 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:猫彦 | 作成日時:2017年9月10日 17時

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