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その時、
その壁に寄りかかっていた影は膝から崩れ落ちるように倒れた。
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「…っAちゃんっ!!!」
俺は足裏がくっついたような感覚を気合いで取り払って走り出し、
倒れ込む彼女を抱きかかえて起き上がらせた。
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成瀬「A…っ、…」
きっと聞かれるつもりはなかったんだと思う。
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みなみ「…っA…っ?」
成瀬も向こうの女性も、
その場で呆然と立ち尽くした。
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『はあっ、…はあ…っ、』
苦しそうに胸のあたりをギュッと掴みながら短く息を吸って吐いてを繰り返すAちゃんに
どうしたらいいか分からず戸惑ってしまって、
背中をさすってあげることしかできない俺。
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こういう時に何もできないなんて。
また自分の不甲斐なさに嫌気がさす。
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成瀬も女性も言葉を失ったようにこちらに視線だけ寄せて、駆け寄ってこなかった。
来たらきっと、Aちゃんはもっと呼吸が乱れてしまうと思ったんだろう。
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しばらくして、
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朝倉「Aちゃんっ!!」
美月ちゃんが駆け寄ってきた。
朝倉「深澤!!担架持ってきて!それと酸素マスクも!」
深澤「…わ、わかった!」
高岡「あたしルート取るから!桜庭どいて!
Aっ、わかる?!ゆっくり呼吸しよっか…!」
「…っ、」
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その場は騒然としていた。
ベッドで眠るAちゃんの頬には乾いた涙の跡。
あのあとAちゃんのお母さんにはとりあえず帰ってもらって、
成瀬から俺らと本郷先生に事情を説明してもらった。
「Aちゃんさ、
目覚ましたらまた記憶消えちゃってるとかないよね?」
深澤「や…やめろよ、縁起でもないこと言うなよ。」
「…だよね…」
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あの時の苦しそうな彼女の顔が脳裏から離れない。
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「..成瀬、ごめん。
Aちゃん探すの間に合わなくて、」
成瀬「..なんでお前に謝られなきゃないんだ。」
朝倉「先輩…。」
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みはる - 楽しく読まんでいます!続き待ってます!更新楽しみにしてます! (2021年8月13日 22時) (レス) id: 5d16bd346f (このIDを非表示/違反報告)
なお - ハマって毎日読んでいます!更新楽しみにしています♪ (2021年8月12日 0時) (レス) id: 513e83bcd9 (このIDを非表示/違反報告)
Ne - おもしろかったです。これからもがんばってください!成瀬落ちがいいな… (2021年8月10日 22時) (レス) id: 5823d18468 (このIDを非表示/違反報告)
かとし - こんばんは!楽しく見させていただいてます! 1日に何話ぐらい投稿されてるのですか? これからも応援してます! (2021年8月10日 19時) (レス) id: b3e3245893 (このIDを非表示/違反報告)
にこり(プロフ) - 毎日暑いてますよね、私は暑さで蒸発しました。作者様も熱中症などお気をつけください! (2021年8月9日 13時) (レス) id: 94c21bcf57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なな | 作成日時:2021年8月1日 18時