夜明けの空に。2 (ページ29)

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桜庭「…薬は一生飲み続けなくちゃいけないし、色々リスクもある。

母親の言う通りなんだ。

俺は大人しく、机に向かってる方が向いてる。

…救急医は…向いてない…。」

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”なりたい”そう思ってもどうしようもないことがある。

思ってるだけで叶うほど夢は甘くない。

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桜庭「どんなに頑張っても、

どうにもならないことってあるよね…。」

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持って生まれてしまった”病”には逆らえなかった。

頑張っても頑張っても身体がついてこない。

桜庭は、やるせない気持ちでいっぱいだった。

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桜庭「お疲れ。」

朝倉「桜庭…。」

朝倉の呼びかけも届かず、

桜庭は一人で歩き進めて行ってしまった。

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美月side

ゴミ捨てに出ていると、

『美月先生！』

後ろからAちゃんがやってくる。

「おー、Aちゃん。どこいくの？」

『海見にお散歩ですっ！』

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ゆったりとしたシルエットのワンピースを着てる彼女だが、

とても似合っている。

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「へえ、海見に？」

『はい。私、島育ちなんで、

海見ると思い出しちゃうんですよね〜、幼い頃を！』

「ええ！島育ちなんだ？

え、じゃあAちゃんはさ、

どのタイミングで医者になろうと思ったの？」

『…んー…きっかけは、祖母ですかね！』

「おばあさん…？」

『はい、ずっと島の祖母に育てられてきたので、

すごくおばあちゃんっ子だったんですよ。

若い頃看護師だった祖母は、

人一倍健康に気を遣っていて、元気で活力のある人だったんですけど、

私が高校生の頃、急に胃がんを患ってしまって。

小さな島には大きな病院もなくて。

..だからその時思ったんです、私が医者になれば、

島にいる祖母がわざわざ島を渡らなくても、

治療ができるんじゃん？！って。』

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おばあさんのお話をするAちゃんはとても嬉しそうだった。

初めて聞く、彼女の家族の話。