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JH side
Aはどこだ。
どこに居るんだ。
俺はずっと探していた。
ずっと、ずっと、探していた。
ただ一言、伝えたくて。
ただ、謝りたくて。
研究棟を飛び出し、寮の方角へ向かう。
降りしきる雨の冷たさも気にならない。
俺は傘の間を駆け抜けた。
革靴は水溜まりを跳ね、泥に汚れていく。
それでも、そんなこと、どうだっていい。
学舎を探す。
寮の周辺を探す。
校庭の近隣を探す。
…薔薇園のなかを、彷徨う。
それでも君はいない。
世界が君を隠してしまったように。
消し去ってしまったように。
Aがいなくたって、世界は回る。
そんなことを告げるように、残酷なほど無邪気な子どもたちの、雨にはしゃぐ声が辺りから聞こえてくる。
…違う、違うんだ。
君がいなくちゃ、俺の世界は動き出さなかった。
君がいなくちゃ、だめなんだ。
俺は勘違いしていた。
愛は、俺だけが叶えるものだと。
君に伝え、理解させることが正しいのだと。
君にとっての幸せなんて、まるで考えもしなかった。
JH「はあ、はあ…」
土砂降りのなか、俺は立ち止まる。
雨に濡れた前髪をかき上げ、嘆息するのだった。
遠くでは雷鳴が轟く。
真っ黒な雲が、この呪われた森を覆い尽くす。
俺は、自分の手元に視線を落とした。
真紅の血に濡れた、忌まわしい右腕。
…人間でも、吸血鬼でもない化け物の、血生臭い右腕。
JH「っ……！」
…どうして。
俺は誰かを悲しませることしか出来ないんだ。
どうして、上手く生きられない。
どうして、みんなを傷付けてしまう。
俺は自分の腕を地面に叩きつけた。
痛覚も何も無い。
苦しみを知らないこの体が憎い。
だから、何度も何度も、叩きつけた。
骨の折れる音が聞こえても、それでも、叩きつけた。
俺の頬を涙が伝う。
どうして、涙って、こんなに熱いのか。
俺はその場にうずくまり、声を殺しながら泣いた。
血に塗れたこの体を、非情に雨が濡らしていく。
薔薇の花が、俺の存在ごと覆い尽くしてしまう。
どうして俺は、生まれてきたんだろう。
愛したひとのひとりでさえ、笑顔にできないままで。
そんなときだった。
むせ返るような薔薇の香りとともに、雨が止んだ。
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れいら(プロフ) - 閲覧頂きありがとうございます、本編では文字数オーバーなのでこちらから失礼します。公開が大変遅れてしまいましたが5章目が完成しました。次章で最終章になります。公開まで今しばらくお待ちください。 (2023年3月2日 11時) (
レス) id: 0149abc0ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れいら
| 作成日時：2023年3月2日 11時
