過ち ページ38
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YT side
ヘチャンが死んだ。
ジェヒョンが自分の脅威を排除した。
そしてAは、絶望した。
…あんなに悲惨な事件が起こったのに、時間の流れは無常だ。この山奥にはもう雪が降り始め、あの惨劇を知らない生徒たちはいつもと変わらぬ様子で元気に登校している。
結局、生物の命の価値はそんなものだ。
歯車が一つ無くなったところで、正常に世の中は動き続ける。
Aを忌々しい呪いから解き放つまで、あと少し。
その血の力を手に入れるまでも、あと少し。
そして彼女は今でもまだ、絶望の淵に居る。
…美しいと思わないか。この惨状を。
YT「ジェヒョナ」
JH「……」
YT「…ずっとここに閉じ籠もったままじゃん。あとテヨンを殺すだけなんだよ？それだけでAはお前のものになるし、全部終わるんだよ」
そんな俺の呼びかけにも応じない。
奴は研究室のぼろぼろのソファーに座ったまま、平気で数日間動かない。
ジェヒョンの本来の力を少し解き放っただけで、ジェヒョンはヘチャンを瞬殺した。その力をもってすれば、いくら相手がテヨンだろうと、きっとすぐに殺すことが出来るはず。
…早いとこ、カタをつけたい。
だけど当の本人が気力を出さなきゃ、事態は動かない。
俺もそろそろ痺れを切らすところだ。
それに、テヨンの動きが見えないことが随分不気味だ。
今でも変わらず薔薇園で手入れをしている姿を見かけるが、彼がどのように暗躍しているのかを察知できなくなった。これまでは俺の力を使えば、奴がどこで何をしているかなど一目瞭然だったのに。
…向こうも、俺の正体に気付いている。
だからこそ、ジェヒョンを使って早く手を打ちたかった。
YT「なあ、ジェヒョンってば…」
JH「…ねえ、ユタヒョン」
YT「え？」
奴の肩に手を置き、顔を覗き込むと、数日ぶりに口を開いた。
その低い声は少し掠れている。
声帯を使わなければ、人間や吸血鬼と同じように回復が必要になる。…まるでこいつが本当に人間のようで、気持ち悪さを感じた。
そんなことを感じていると、ジェヒョンが俺を見上げていたことに気付く。
…血の通わない、感情を持たない、道具。
そんなはずのおまえが、どうしてそんな表情をするんだ。
JH「…俺がしたことは、本当に正しかったのかな」
YT「…」
JH「……Aはあれから、一度でも、笑ったのかな…」
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れいら(プロフ) - 閲覧頂きありがとうございます、本編では文字数オーバーなのでこちらから失礼します。公開が大変遅れてしまいましたが5章目が完成しました。次章で最終章になります。公開まで今しばらくお待ちください。 (2023年3月2日 11時) (
レス) id: 0149abc0ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れいら
| 作成日時：2023年3月2日 11時
