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HC side
あの夏から、少しの時間が経った。
…俺的には、全然“少し”じゃなかったけど。
Aがタイミングを狙って俺に話しかけようとしてきていたのも、それとなく俺の様子を窺っていたのも、全部知ってる。だけど俺はあのときのショックから未だに抜け出せず、自分ばかり過去を振り切って俺ともう一度接そうとしているあいつにむかついて、意地張って。
このままあいつから離れていくのが、俺のためになる。
何度もそう、自分に言い聞かせたんだ。
それなのに、やっぱり、やっぱり、
Aのことを想わない日なんて一度も無かった。
あいつは俺を裏切ったし、俺はあいつの言葉に傷付けられた。
そして俺も、Aのことを傷付けた。
どうして俺は、前に一歩踏み出せないんだろう。
どうして俺ばかり、あの夏に取り残されているんだろう。
今日の席替えでも、Aが隣に来て、俺はまたあいつを無視してしまった。
…こんなことばかり、していられないよなって。
俺はだんだん俺が恥ずかしくなった。
あいつと向き合うことを恐れている、そんな俺自身が。
あいつが寮に帰ってくるタイミングを見計らって、俺は彼女のことをずっと待っていた。
しばらくしてAがやってきた。
肩の下まで伸びた髪。相変わらず猫背気味で、ブレザーのポケットに手を突っ込んでる。目つきの悪さも変わらない。
…ふと、頭をよぎった。
俺だけに見せる、可憐な笑顔が。
俺はAを散歩に誘い出した。
薔薇園を歩くのはなんだか癪に障るから、中等学舎近くの庭園を、少しぎこちなくも肩を並べて歩く。
自分の左側の視界が遮られる。
そんな感覚も久しぶりで、どこか胸がきゅっと締め付けられるようで。こんなにもAは背が低かったっけ、って思ったり。
何を話すでもなく、続く沈黙。
正直、何を話すべきか分からなかった。
…そうだ。
ただ一つだけ、ずっと聞きたかったことがある。
俺はAのことをなんにも知らないから。
HC「あのさ」
「…え？」
HC「おまえ、なんで自分の家、燃やしたの？」
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れいら(プロフ) - 閲覧頂きありがとうございます、本編では文字数オーバーなのでこちらから失礼します。公開が大変遅れてしまいましたが5章目が完成しました。次章で最終章になります。公開まで今しばらくお待ちください。 (2023年3月2日 11時) (
レス) id: 0149abc0ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れいら
| 作成日時：2023年3月2日 11時
